日本繁殖生物学会 講演要旨集
第112回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-19
会議情報

内分泌
マウス排卵機構へのFXR(farnesoid X receptor)の関与
*富岡 郁夫棚橋 由佳耕作 比香留諸白 家奈子藤井 博
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】腸肝組織においてコレステロール代謝を制御するFXRは雌雄生殖器にも存在している。我々はこれまでの研究で,初代培養のマウス顆粒層細胞において,FXRは自身の標的遺伝子を介してエストラジールとプロゲステロンの合成を制御することを報告した。しかしながら,細胞レベルの解析だけでは生体内の複雑系におけるFXRの真の機能を解明することは難しい。そこで本研究は,ゲノム編集技術を用いて作出したFXRノックアウト(FXR-KO)雌マウスを用いて,卵巣のFXRが排卵機構に関与するメカニズムを解析した。【方法】①未成熟の野生型およびFXR-KO雌マウスに過排卵処理をおこない,排卵数を比較した。②野生型およびFXR-KO雌マウスの排卵過程における性ホルモン合成関連遺伝子群および性ホルモン受容体関連遺伝子群の発現を調べるため,PMSG投与後0時間,24時間,および48時間で卵胞顆粒層細胞を採取し,qPCRを用いて解析した。【結果】①過排卵試験の結果,平均採卵数は野生型マウスで18.95個,FXR-KOマウスで35.0個と,FXR-KOマウスの排卵数が極めて有意に多かった。②性ホルモン合成関連の経時的遺伝子発現量解析の結果,PMSG投与後24時間のFXR-KOマウスでエストラジオール合成遺伝子であるHsd17b1の発現が有意に高く,Cyp19a1の発現も高い傾向にあった。さらに,性ホルモン受容体関連の経時的遺伝子発現量解析の結果,PMSG投与後24時間のFXR-KOマウスでFSH受容体遺伝子の発現が極めて有意に高かった。以上の結果,体内において卵巣FXRはFSH受容体をターゲットとし,エストラジオール合成を下方制御することで,排卵数を抑制している可能性が示された。

著者関連情報
© 2019 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top