主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第112回日本繁殖生物学会大会
回次: 112
開催地: 北海道大学
開催日: 2019/09/02 - 2019/09/05
尿腟は腟内に尿が混入した状態であり,乳用牛の受胎性に悪影響を及ぼす。通常,尿腟は腟検査における目視により診断される。尿中には紫外線により発色する蛍光物質が含まれていることから,今回,腟内粘液に対する紫外線照射(UV検査)により尿腟の診断が容易になると考え,その有用性を検討した。【材料および方法】ホルスタイン種経産牛を用いた。調査①:発情時に腟検査を行い(n=486),同時に腟内に貯留する粘液を用手により採取した(n=490)。採取後,人工授精を行い,受胎率を調べた。採取した粘液を自然光または白色灯下において目視で観察(NL検査)するとともに,暗室下でUV検査を実施した。さらに尿の混入を検出する目的で粘液中のクレアチニン(Cre)濃度を測定した。調査②:発情時に腟検査および腟内UV検査を行い(n=201),尿腟陽性率を比較した。両調査ともに腟検査による尿腟の診断は既報に従い,NL検査では目視による尿の混入,UV法では発色の認められるものを尿腟陽性とした。【結果】調査①:腟検査,NL検査およびUV検査における尿腟陽性率はそれぞれ6.4%,10.2%,および40.2%であった。Cre濃度は,NL検査・UV検査陰性,NL検査陰性・UV検査陽性,NL検査・UV検査陽性の順に高かった。腟内粘液のCre濃度(mg/dl)に基づき0–0.6(Cre無),0.7–8.9(Cre低)および9.0以上(Cre高)として項目化し,受胎を目的変数としたロジスティック回帰分析を行ったところ,Cre無とCre低およびCre高を比較したオッズ比は0.63(P = 0.04)および0.24(P = 0.0006)であった。調査②:NL検査およびUV検査における尿腟陽性率は8.0%および15.0%であった。【考察】UV検査は低Cre濃度の粘液も高い精度で診断でき,尿腟の陽性率が高かったと考えられた。Cre低の粘液も低受胎性だったことから,従来に考えられているよりも,尿腟は経産牛の受胎率低下の原因となっていることが示唆された。