主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第112回日本繁殖生物学会大会
回次: 112
開催地: 北海道大学
開催日: 2019/09/02 - 2019/09/05
【目的】閉経時の女性にしばしば認められるうつや不安症状は,卵巣活動の減弱と停止に伴う血中ステロイドホルモンレベルの低下に起因することが知られている。近年,様々な生体機能の維持に腸内細菌叢が関わることが明らかにされつつあり,脳腸相関の重要性も示されている。そこで本研究は,ステロイドホルモンの1つであるプロゲステロンが腸内細菌叢を介してうつと不安行動に影響を及ぼすかの検討を行った。【方法】卵巣摘出(OVX)マウスに対して,プロゲステロンチューブ移植,抗生物質処理やラクトバチラス投与などを行い,腸内細菌叢解析,行動試験および脳内の遺伝子発現解析を行なった。また,プロゲステロンのラクトバチラス菌の増殖に対する効果をin vitroで評価した。【結果】過去の報告通り,OVXマウスにプロゲステロンチューブを移植することで,うつおよび不安行動が改善されることを確認した。プロゲステロンは腸内細菌叢の構成に変化を及ぼし,特にラクトバチルス種が増加していた。また,抗生物質投与によりプロゲステロンの抗うつと抗不安効果が消失することが確認された。さらに,プロゲステロンによって増加したラクトバチルス(L.)ロイテリ菌の投与がOVXマウスにおけるうつ行動を減少させ,脳の海馬内におけるBDNF遺伝子発現の上昇が認められた。さらに,プロゲステロンがin vitroでL. ロイテリ菌の増殖を刺激することを見出した。【考察】本研究において,卵巣由来のプロゲステロンは腸内のラクトバチラスを増加させることによって,うつや不安症状を軽減することを示しており,閉経時に見られるうつや不安症状の緩和にプロバイオティクスが有効である可能性を示唆している。