日本繁殖生物学会 講演要旨集
第112回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-49
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ポスター発表
卵母細胞の大きな細胞質が発生に及ぼす影響
*京極 博久北島 智也
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抄録

【目的】 卵母細胞の第一減数分裂では,染色体分配異常が起こりやすいことが知られている。染色体分配は,主に微小管によって構成された,紡錘体とよばれる細胞内構造体により行われる。これまでの研究より,卵母細胞の細胞質量によって大きなサイズにスケーリングされた大きな紡錘体は,安定性が低下しており染色体の赤道面への整列異常が増加することにより染色体分配異常を引き起こすことが明らかとなった。すなわち,染色体分配に関しては,細胞質が小さい方が有利であることが示唆されている。では,なぜ卵母細胞は,大きな細胞質を持っているのでしょうか?胚の発生能力を上げるために大きな細胞質が必要であることは,よく知られている。しかし,具体的にどの過程において細胞質が大きい方が有利なのかは分かっていない。そこで,卵母細胞が大きな細胞質を持つメリットの解明を目指して研究を行った。【方法】 本研究ではマウス卵母細胞を実験に用いた。顕微操作により細胞質量を半分に減らした卵母細胞(Half)と細胞質量を2倍にした卵母細胞(Double)を作成した。これらの卵母細胞において,受精能力の変化(実験1),前核の形成過程(実験2),核のメチル化修飾(実験3)を高解像度ライブセルイメージングと免疫染色を用いて観察した。[結果および考察](実験1)受精率は細胞質を小さくすると低くなった。また,受精後の極体放出には大きな細胞質が必要であることが示唆された。(実験2)前核の大きさはHalf卵母細胞では,約半分にDouble卵母細胞では,約2倍になった。すなわち前核サイズは細胞質量依存的に変化することが明らかとなった。(実験3)細胞質サイズの異なる卵母細胞において前核期での雌雄前核でのメチル化レベルを計測したところ,雌性前核で優位にメチル化レベルが変化していた。すなわち適正なメチル化レベルを維持するために細胞質サイズは重要であることが示唆された。

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