日本繁殖生物学会 講演要旨集
第113回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-125
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ポスター発表
非泌乳期ホルスタイン種経産雌牛における卵胞刺激ホルモンの尾椎硬膜外腔投与後の血漿中性ステロイドホルモン動態
*坂口 謙一郎栁川 洋二郎NINPETCH Nattapong河野 光平須田 智子吉岡 耕治片桐 成二永野 昌志
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抄録

【目的】牛受精卵の需要増加に伴い,体内・体外胚生産の生産効率を高める卵胞刺激ホルモン(FSH)投与法の簡略化が求められている。我々は,尾椎硬膜外腔へのFSHの単回投与により,漸減投与よりも血中FSH濃度が高く推移し(Sakaguchi et al. Fertility 2020),過剰排卵が誘起でき,経腟採卵-体外受精における胚発生率が漸減投与よりも高くなることを明らかにした(Sakaguchi et al. JRD 2018)。本研究では,硬膜外投与により体外受精の胚発生率が向上した原因を解明するため,ゴナドトロピンにより制御され,卵子発生能に影響を与える性ステロイドホルモンの血中濃度をFSHの漸減投与および硬膜外投与で比較した。【方法】非泌乳期ホルスタイン種経産牛3頭に,腟内留置型プロジェステロン(P4)徐放剤およびエストラジオール(E2)安息香酸エステル 2 mgの筋肉内投与により卵胞波発現を同期化し,4日後にブタ下垂体由来FSH 30 AUを1日2回3日間に分割して筋肉内に漸減投与した。2~4ヶ月後,同じ牛の卵胞波発現を再度同期化した後,FSH 30 AUを尾椎硬膜外腔に単回投与した。両処置とも最初のFSH投与後48時間目にP4徐放剤を抜去し,プロスタグランジンF 25 mgを投与した。FSH投与開始後0~104時間目に採血を行い,血中P4,E2,アンドロステンジオン(A4)およびテストステロン (T)濃度を酵素免疫測定法により測定した。【結果】両群のP4,A4およびE2濃度に差異はなかったが,T濃度は硬膜外投与が漸減投与よりも低い傾向がみられた(P = 0.08)。P4徐放剤抜去後,P4濃度は直ちに低下し(P < 0.05),E2濃度は48時間目以降高くなった(P < 0.05)。【考察】硬膜外投与で血中T濃度が低い傾向がみられたことから,高いFSHによりTからE2への変換が漸減投与に比べて促進された可能性が示唆された。一方,血中E2濃度に差は見られなかったことから,卵胞内E2濃度やE2代謝に着目して研究を行う必要がある。

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© 2020 日本繁殖生物学会
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