主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第113回日本繁殖生物学会大会
回次: 113
開催地: 東北大学
開催日: 2020/09/23 - 2020/09/25
【背景】精子運動性は,一般的に牛凍結精液の品質規格の一つに設定されており,平準化できることが望ましい。一方,ウシ精子の運動性には個体差があり,同一個体でも射精毎に大きく異なる場合がある。そこで本研究では,凍結融解後の精子運動性を保持する手法を開発する一端として,精液処理過程で変化するウシ精子運動性に関わる代謝物質を探索することを目的とした。【材料および方法】ホルスタイン種種雄牛4頭から人工腟筒により2射精分の精液を採取し,それぞれ常法に従って凍結精液ストローを作製した。凍結精液は,38℃の温湯に15秒間浸漬して融解し,トリスクエン酸緩衝糖(TC)液を用いて遠心洗浄した。 TC液を培地として38℃の好気条件下で6時間インキュベーションした。採取直後,凍結融解後およびインキュベーション後にそれぞれ運動解析装置を用いて精子運動性を測定した。また,各段階で精子1000万をPBSで洗浄し,メタノールで精子内成分を抽出した。抽出液に内部標準を加えたのち,限外ろ過によりタンパク質成分を除去した。キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析法により抽出液中のイオン性成分を測定した。【結果および考察】射出直後に検出され凍結融解後に検出されなかった物質はなかった。射出直後と比較して,凍結融解後にアルギニン,リジンおよびプロリンなどの遊離アミノ酸が有意に(P<0.05)増加したが,インキュベーション後に有意に低下(P<0.05)した。また,射出直後と比較して,凍結融解後にクレアチン,タウリンおよびコリンが有意に(P<0.05)低下したが,インキュベーション後にはほとんど変化しなかった。以上より,凍結融解の過程で完全に喪失するイオン性物質はないものの,タンパク質が分解して遊離アミノ酸が漏出するかエネルギー源とされる可能性が考えられた。また,細胞膜安定化や抗酸化に関わる物質が減少したことから,これらを補う添加剤がウシ精子保存性の向上に有効な可能性が考えられた。