日本繁殖生物学会 講演要旨集
第114回日本繁殖生物学会大会
セッションID: AW-10
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生殖工学
GV期卵母細胞へのエレクトロポレーション法によるsiRNAの導入
*山本 琢人本多 慎之介出口 一成池田 俊太郎南 直治郎
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抄録

【目的】標的遺伝子のmRNAを分解する低分子二本鎖RNA(siRNA)の細胞への導入は遺伝子発現解析における強力かつ一般的な実験手法であるが,GV期から受精前の卵母細胞に対してはあまり用いられていない。その理由の一つとして,一般的に受精卵へのsiRNAの導入には顕微注入法が用いられているが,卵母細胞に導入する場合は卵丘細胞を除去する必要があるため,その影響でその後の受精操作や発生に大きな影響が出てくることがあげられる。そこで本研究ではGV期卵母細胞において卵丘細胞の有無が発生へあたえる影響を評価するとともに,より簡便な遺伝子発現解析手法を検討することを目的として,エレクトロポレーションによって卵丘細胞を除去することなくsiRNAをGV期卵母細胞へと導入する手法を試みた。【方法】ICR系統のマウスのGV期卵母細胞を用い,卵丘細胞の有無がGV期卵母細胞のその後の受精能と発生能に与える影響を評価した。GV期卵母細胞を①卵丘細胞に覆われた卵母細胞と②人為的に(i)から卵丘細胞を除去した卵母細胞に分けて体外成熟,体外受精を行い発生への影響を検討した。siRNAの導入にはNEPA21(ネッパジーン社)を用いてエレクトロポレーションによって行い,15時間の体外成熟後にRT-qPCRによって遺伝子発現解析を行った。発生能の評価には15時間の体外成熟後に体外受精を行い発生への影響を検討した。【結果】GV期卵母細胞の受精率はそれぞれ①50.8%,②3.2%,胚盤胞への発生率は①44.4%,②0%であり,卵丘細胞の除去はGV期卵母細胞の受精能と発生能を著しく低下させることが確認された。GV期卵母細胞へのエレクトロポレーションによってsiRNAを導入した結果,15時間後のMII期卵母細胞で7–9割のmRNA発現抑制が確認された。以上のことから,本研究で我々が新たに試みたGV期卵母細胞へのエレクトロポレーション法では,卵丘細胞を除去せずにsiRNAの導入が可能となり,その機能を発揮できることが明らかとなった。

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