日本繁殖生物学会 講演要旨集
第114回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR-18
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生殖工学
piggyBacシステムを利用したエピゲノム編集マウスの作出
*堀居 拓郎森田 純代木村 美香畑田 出穂
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抄録

【目的】CRISPR/Cas9システムはゲノム編集だけでなく,DNAメチル化やヒストン修飾などのエピゲノム編集を可能にする。これまでに私たちはdCas9-SunTagシステムを用いた高効率エピゲノム編集法を開発し,このシステムを受精卵に応用することでH19遺伝子のDNAメチル化可変領域(H19-DMR)が脱メチル化したエピゲノム疾患モデルマウスを作製することに成功した。特にエピゲノム編集ベクターを組み込んだトランスジェニック(TG)マウスは,エピゲノムの編集効率が高く,トランスジーンを受け継いだ子孫もエピゲノム編集されるため,エピゲノム疾患モデルマウスの系統を樹立する最適な方法である。一方,従来のTGマウス作製法では作製効率が約10%程度と高くはなく,さらに効率を改善する余地が残っていた。【方法】本研究では,トランスポゾンによるゲノムへの組み込みが可能なpiggyBacシステムを用いてエピゲノム編集マウスの作製を試みた。piggyBacエピゲノム編集ベクター(17.7 kb)およびトランスポゼースのHyPBase(RNA)を様々な濃度の組み合わせで受精卵の細胞質に注入し,得られた11.5日胚を用いてTGマウス作製に最適な濃度条件を検討した。続いて最適条件を用いてTG産仔を作出し,DNAメチル化解析や表現型解析を行った。【結果】11.5日胚の解析結果から,1 µlあたりベクター1 ngとHyPBase 7 ngを含む液を受精卵に注入した場合に,最も高いTG作製効率が得られることが分かった(56.4%, n=55)。この条件で産仔を作出したところ,従来のTG作製法と比べて高効率でTGマウスを得ることができた(37.0% vs 13.0%)。このTGマウスは標的領域であるH19-DMRの脱メチル化とそれにともなう遺伝子発現変化,子宮内発育不全や摂食障害,血糖値異常などの表現型を示した。本研究により,piggyBacシステムを用いることで従来法より効率良くエピゲノム編集マウスを得られることが示された。

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