日本繁殖生物学会 講演要旨集
第114回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR-23
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内分泌
GnRHパルスジェネレーター解析のための新規Cre発現ラットの作製
*長江 麻佑子小林 俊寛三宝 誠平林 真澄水野 直彬中内 啓光榎本 悠希井上 直子束村 博子上野山 賀久
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抄録

我々は,遺伝子改変ラットを用いた弓状核特異的なキスペプチン遺伝子(Kiss1)ノックアウトおよび弓状核特異的なKiss1レスキューによるKNDy(キスペプチン/ニューロキニンB/ダイノルフィンA)ニューロンの復元により,哺乳類の卵胞発育を司るGnRHパルスジェネレーターの本体がKNDyニューロンであることを証明した。本研究では,KNDyニューロンにおけるGnRHパルス発生の分子メカニズムの解明に向けて,新たに2系統の遺伝子改変ラットの作製を試みた。Kiss1プロモーター制御下でCre組換え酵素を発現するKiss1-Creラットを,胚性幹(ES)細胞を用いたジーンターゲティング法により作製した。Kiss1のコーディング領域をCreに置き換えたターゲティングベクターをラットES細胞へエレクトロポレーションにより導入し,相同組換えの生じたES細胞をPCR,サザンブロット法により選別した。相同組換えES細胞をWistar系ラットの胚盤胞へマイクロインジェクションして得られた雄キメララット3頭をWistar系雌ラットと交配し,2頭のキメララットから相同組換えES細胞に由来するKiss1-Creラットを得た。さらに,κオピオイド受容体遺伝子(Oprk1)プロモーター制御下でκオピオイド受容体とCre組換え酵素を発現するOprk1-Creラットを,CRISPR/Cas9およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて作製した。Oprk1を認識するgRNAとCas9タンパク質の複合体をWistar系ラットの前核期胚にエレクトロポレーションにより導入し,その後,Oprk1の終止コドンを自己切断ペプチドをコードするT2ACreに置き換えたターゲティングベクターを発現するAAVを含む培地で一晩培養し,レシピエントの卵管に移植した。得られた16頭の産仔についてPCRおよびシークエンス解析により遺伝子型を判定し,6頭のOprk1-Creラットを得た。以上のように,新たに2系統のCre発現ラットの作製に成功した。

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