日本繁殖生物学会 講演要旨集
第114回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR-25
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内分泌
泌乳ラットにおけるKiss1発現抑制を担うエストロゲン受容体共役コリプレッサーの探索
*滝沢 麻里奈上野山 賀久井上 直子束村 博子
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抄録

【目的】泌乳ラットでは,生殖中枢である弓状核キスペプチンニューロンにおけるキスペプチン遺伝子(Kiss1)発現が抑制され,その結果,黄体形成ホルモン分泌が抑制される。これらの抑制は,泌乳後期(約20日間の泌乳期中の分娩後10日以降)には,エストロゲン依存性である。そこで本研究では,泌乳ラットのエストロゲン依存性のKiss1発現抑制を担うエストロゲン受容体α(ERα)共役因子の探索を目的とした。ERα共役コリプレッサーのひとつである核内受容体コリプレッサー2(Ncor2)に着目し,泌乳ラットのKiss1発現細胞におけるNcor2発現の有無を検討した。【方法】Wistar-Imamichiラットを用い,分娩後に卵巣除去し,生理的濃度のエストロゲンを処理した泌乳ラット(泌乳群)および分娩後に乳仔を取り除いた非泌乳ラット(非泌乳群)を設け,分娩後16日目に脳を採取した。両群のラットの脳切片を用いて,(1)Kiss1Ncor2との蛍光二重標識in situ hybridization(ISH),および(2)Kiss1と共発現することが知られるニューロキニンB遺伝子(Tac3)とNcor2との蛍光二重標識ISHにより,弓状核キスペプチンニューロンにおけるNcor2発現を検討した。【結果および考察】(1)非泌乳群では,約9割のKiss1陽性細胞において,泌乳群では,約8割のKiss1陽性細胞においてNcor2の共発現が認められた。(2)非泌乳群では,約9割のTac3陽性細胞において,泌乳群では,約9割のTac3陽性細胞においてNcor2の共発現が認められた。以上の結果から,非泌乳,泌乳にかかわらず,殆どの弓状核キスペプチンニューロンにNcor2が発現することが明らかとなった。これらの結果から,泌乳後期におけるエストロゲン依存性のKiss1発現抑制にERαコリプレッサーであるNcor2が,ERαと共役してKiss1発現の抑制を仲介する可能性が示唆された。

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