主催: 日本繁殖生物学会
会議名: 第114回日本繁殖生物学会大会
回次: 114
開催地: Web開催(京都大学)
開催日: 2021/09/21 - 2021/09/24
【目的】イヌは1年に1~2回しか発情期を迎えず,効率的な繁殖のために有効な発情誘起法の確立が求められる。イヌにおけるeCGとhCG投与効果は不定で,eCGの高用量・複数回投与による高エストロゲン症等の副作用の発現も課題である。本研究では,eCG と抗インヒビン血清(IAS)の併用による無発情期の雌犬の発情及び過排卵の誘起を試みた。【方法】無発情期の雌犬を以下の3群に分け,それぞれ,1. IAS(0.1 ml/kg),2. eCG(50 IU/Kg),および3. IAS(0.1 ml/kg)とeCG(50 IU/Kg体重)の混合溶液を筋肉内注射し(Day 0),2.及び3.ではDay7にhCG(500 IU)を投与した。次いでDay0から14まで陰部の腫脹及び発情出血の有無,血中プロゲステロン(P4)濃度の測定,超音波検査装置による卵巣の観察を行い,発情状況を評価した。【結果】 1.群(n=3)では陰部の腫脹及び発情出血,卵胞発育は見られず,血中P4濃度は2 ng/mlを超えた個体があったがそれ以上の上昇は見られなかった。2.群(n=3)では陰部の腫脹及び発情出血,卵胞の発育が観察された。平均卵胞数は7.7個で,自然発情時(n=32,7.4個)と同様だったが平均排卵数は2.7個と少なかった。血中P4濃度はDay 7~8に2 ng/mlを超えLHサージが起こったと推定されたが,その後のP4濃度の上昇は自然発情と比べて小さかった。以上からeCG単独投与では発情が誘起されるもののP4濃度が正常に上昇せず排卵率が低いことがわかった。3.群(n=6)では陰部の腫脹及び発情出血,卵胞の発育が観察された。平均卵胞数は8.8個,平均排卵数は8.7個であった。血中P4濃度はDay7~9に2 ng/mlを超え,LHサージ後のP4濃度の上昇はeCG単独投与群と比べて顕著に大きかった。以上からIASとeCGの混合投与によって発情が誘起され過排卵に至る可能性,またeCG単独投与で見られたP4濃度の低値及び排卵率の低下を改善できる可能性が示唆された。