日本繁殖生物学会 講演要旨集
第99回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-44
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性周期・妊娠
妊娠初期スンクス子宮におけるProgesterone Receptor発現の解析
*井上 直子内田 陽織田 銑一福田 勝洋
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抄録
【目的】スンクス (Suncus murinus)は周年繁殖の交尾排卵型動物であるが、受精後妊娠中期まで血中プロゲステロン値は低い値を保ち、特に妊娠初期は非妊娠時と同レベルの非常に低い値を示す。また着床前の妊娠初期(D5)で卵巣除去を行っても妊娠の継続が可能なことなど多くの特異的な性質が報告されている。我々は今回妊娠初期におけるP4の影響を解析するため妊娠初期スンクス子宮におけるProgesterone Receptor(PR)の発現ならびにRU486投与による影響について調べた。【方法】KAT系統スンクスを用い、交配した翌日を妊娠0日(D0)とし妊娠は膣内精子により確認した。D0からD10までの子宮を採取し、4%PFA固定後常法に従いパラフィン切片を作成し、PCNA、ssDNA、PR抗体を用い免疫組織化学的解析を行った。またPR拮抗剤であるRU486(13mg/kg)をD5,6/D6,7/D7,8に投与し妊娠阻害の有無を検討した。さらに2日目のRU486投与24時間後それぞれ子宮を採取し、PR抗体を用い免疫組織化学による解析を行った。コントロール群にはコーンオイルのみを投与した。【結果】PRの発現はD0で子宮上皮細胞において極めて強く見られたが、妊娠の経過とともに子宮上皮での発現は見られなくなり(D5)PRの局在は子宮筋層に移行した(D10)。RU486を投与した子宮では子宮筋層以外に子宮上皮細胞でもPR発現が認められた。D7,8RU486投与群のみ2/5が出産に至り、産子数も正常妊娠と変わらなかったが、その他のRU486投与群はいずれも出産には至らなかった。しかしながらD7,8でもRU486投与量を増加させると妊娠に至らなかったことより、スンクスにおいてP4は妊娠維持に必須であり、P4が子宮において局所的に働くことにより低濃度のP4でも妊娠が継続できる可能性が考えられた。
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© 2006 日本繁殖生物学会
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