雄核発生胚および雌核発生胚由来栄養膜幹細胞におけるCdx2遺伝子の発現

抄録

［目的］ホメオボックス転写因子Cdx2は、マウス胚盤胞の栄養外胚葉で発現する遺伝子である。Cdx2遺伝子ノックアウトマウスは、栄養外胚葉への分化不能に伴う胚盤胞形成不全により致死となる。さらに、胎盤を構成する細胞への分化能を有する栄養膜幹細胞（以下TS細胞）においても、Cdx2遺伝子の発現が認められる。以上のことから、栄養外胚葉および胎盤への分化にCdx2遺伝子は重要な役割を果たしていると考えられる。一方、片親ゲノムしか持たない雄核発生胚および雌核発生胚は、胎齢9.5日に胎盤形成不全により致死となることが知られている。しかし、これらの胚における胎盤形成不全にCdx2遺伝子が関与しているかは明らかにされていない。そこで本研究では、雄核発生胚および雌核発生胚から樹立したTS様細胞を用いてCdx2遺伝子の発現を解析し、胎盤形成不全との関連性を考察することを目的とした。［方法］B6D2F1マウス排卵卵子から定法に従って雄核発生胚および雌核発生胚を作出した。得られた胚を胚盤胞まで培養後、フィーダー細胞上で培養し、TS様細胞を樹立した。樹立した雄核発生胚および雌核発生胚由来TS様細胞それぞれ4株について以下の実験を行った。抗CDX2モノクローナル抗体を用いた免疫染色法によりCDX2の局在を観察した。また、RT-PCR法によりTS細胞におけるCdx2遺伝子の発現を調べた。なお、受精卵から樹立したTS細胞をコントロールとした。［結果］雄核発生胚由来TS様細胞では、コントロールと同様、CDX2は核に局在していた。一方、雌核発生胚由来TS様細胞では、一部の細胞の核にのみにしか局在が見られなかった。Cdx2遺伝子は、コントロールにおいて発現していたのに対し、雄核発生胚および雌核発生胚由来TS様細胞では、発現が認められない細胞株があった。現在、タンパク質の局在と遺伝子発現との関連性について、再検証している。