日本繁殖生物学会 講演要旨集
第99回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-32
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卵・受精
マウス2-cell blockを利用した初期胚発生制御に関する研究
*早川 晃司米田 明弘石川 明渡辺 智正
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抄録

[目的]現在マウスの体外培養系は確立されつつあるが、その初期胚発生の調節機構にはいまだ不明な点が多い。一方、特定のマウス初期胚を体外培養すると2細胞期で発生停止し、この現象は2-cell blockとして知られている。私たちはこれまでに近交系の2-cell blockを起こすAKRマウスと起こさないC57BLマウスの交配実験により、2-cell blockには2つの遺伝子座が関与し、そのうちの1つは第4染色体上の55番地付近に位置していることを報告した。この付近には転写に関わる遺伝子がいくつか存在している。また、これまでに2-cell block胚では胚性遺伝子発現の遅延が確認されていることから、本研究では近交系のAKRとC57BLを用いBrUTPの取り込みによる転写活性量の測定を行い、2-cell blockとの関連について調べた。さらにもう1つの遺伝子座がどの染色体上に存在するかQTL解析を行った。[方法]AKR、C57BLとも自然交配により交尾の確認した雌マウスの卵管から前核期胚を採取し、体外培養はWhitten培地で行った。転写活性量は胚をToritonX-100で処理し、BrUTPを取り込ませ、その後免疫染色を行い蛍光強度から測定した。いくつかの候補遺伝子について塩基配列をシークエンスし系統間で比較した。QTL解析は常法に従い行った。[結果]AKR胚とC57BL胚間で転写活性量を比較したところ、2細胞期において測定したすべての時期で有意な差が見られた。さらにQTL解析の結果、第4染色体の55番地付近に転写因子の1つであるnuclear transcription factor-YC(NF-YC)を確認した。そこでNF-YCをシークエンスし、系統間で比較した結果、塩基配列上3箇所で置換が見られたが、いずれもアミノ酸置換を伴わなかった。現在、さらにこの付近に存在する2-cell block候補遺伝子について検討している。また、QTL解析の結果、もう1つの遺伝子座が第3染色体上の18番地から25番地付近に存在する可能性が強く示唆された。

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© 2006 日本繁殖生物学会
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