日本繁殖生物学会 講演要旨集
第99回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-3
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内分泌
エストロジェンの正のフィードバック制御におけるメタスチンの生理的役割
*杉浦 瞳山田 俊児足立 幸香松本 寛和上野山 賀久井上 金治束村 博子前多 敬一郎
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抄録
哺乳類の雌において,排卵は性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)サージそれに引き続く黄体形成ホルモン(LH)サージにより誘起される。これらサージ状分泌は卵胞より大量に分泌されるエストロジェンが脳に働くことにより誘起されるが,その詳細な機序はいまだ明らかではない。われわれはヒトの胎盤より発見された神経ペプチドであるメタスチンが,発情周期におけるLHサージの成立に生理的に関わっていることを発見した。本実験では,メタスチンがエストロジェンの正のフィードバック作用により誘起されるLHサージを仲介していることを明らかにする目的で行った。 成熟したWistar-imamichi系雌ラットの卵巣を除去し,皮下にestradiol-17β含有シリコンチューブを投与し,LHサージを誘起した。メタスチン神経の投射部位のひとつである視索前野(POA)にあらかじめカニューラを挿入しておき,内因性に放出されるメタスチンの効果を中和する目的で特異的な抗メタスチン抗体を10:00から18:00の間投与し,LHサージに及ぼす影響を調べた。 PBSを投与した対照群において,16:00をピークとするLHサージが観察された。これに対し,視索前野に抗メタスチン抗体を投与することにより,LHサージは完全に消失した。これにより,発情前期にPOA付近において放出される内因性のメタスチンが,エストロジェンの正のフィードバックによるLHサージの誘起効果を仲介していることが明らかとなった。
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© 2006 日本繁殖生物学会
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