2013 年 42 巻 5 号 p. 291-299
サイフォンを利用した無動力撹拌機構の導入がメタン発酵処理特性に及ぼす影響を評価するため,⑴サイフォン式撹拌,⑵完全混合,⑶無撹拌の各装置を用いた比較実験を行った.3種類の装置を並列して食堂残飯を処理する中温メタン発酵の連続実験を行い,処理性能と槽内の反応状況の分布を比較し,以下に示す特徴的な差異を発見した.サイフォン式撹拌装置は最大 18 ㎏/㎥/d まで達する高いCOD 容積負荷の下で良好な運転を継続できたのに対して,無撹拌装置は 10 ㎏/㎥/d の負荷の下で酸性化した.また,同一の負荷条件の下においてサイフォン式撹拌装置は完全混合装置と同等で,無撹拌装置よりも10%高いメタン収率が得られた.サイフォン撹拌装置の内部は無撹拌装置と比較して揮発性脂肪酸やVS が均一に分布しており,投入原料が槽全体によく分散されていることを示唆していた.このような特徴が無撹拌装置において起きる沈殿や酸性化の抑止に寄与していたと考えられた.