日本発祥の技術であるUFB(ウルトラファインバブル)水は,直径1μm 以下の気泡の集合体が溶け込んでいる機能水であり,近年注目を集めている.CO2を溶解したUFB水は,殺菌効果があるという報告がある.しかし,CO2は水に溶けやすく,気泡かどうかの判断が難しいといえる.本研究では,加圧溶解攪拌型ミキサを用いてCO2-UFB水を生成し,TDS,炭酸ガス濃度,pH,ナノ個数密度,NaOH による滴定量,ラジカルを調査した.その結果,CO2-UFB 水を生成した際には,攪拌時間とともにTDS,炭酸ガス濃度,滴定量は増加した.ナノ個数密度は,ミキサの1枚目プレートに比べ2枚目プレートを小さな表面積とすることで増加した.また,CO2-UFB 水中にはメチルラジカルの存在が確認できた.さらに,炭酸ガス濃度とTDS の計測によりCO2-UFB の存在が予測できる.
本研究は,人工湿地による酸性坑廃水(Zn 30 ㎎/L,Cd 0.3 ㎎/L,Cu 20 ㎎/L,Pb 2.5 ㎎/L,pH 4.7)からの金属除去に及ぼすヨシの影響を明らかとすることを目的として実施した.1年以上のラボスケールのシーケンシングバッチ処理を通じて,基質とした石灰石による模擬坑廃水の中和によって,銅と鉛は排水基準以下にまで除去できた.カドミウムも排水基準近くにまで除去できたが,ヨシを植えた人工湿地では,亜鉛の除去は不十分であった.ヨシは土壌細菌数を増やし,Rhodanobacter 属やCellulomonas 属の比率を高めた一方,pH の上昇を抑制したため,人工湿地における亜鉛とカドミウムの除去に阻害的であった.
琵琶湖では年に一度の全層循環が生じにくくなっており,底層の貧酸素状態の定常化とそれに伴う栄養塩類や重金属類の溶出が懸念されている.本研究では,琵琶湖南湖から採取した不攪乱の底泥を用いて,底層溶存酸素濃度の減少により,底泥中から溶出する有機物や栄養塩類,重金属類の溶出フラックスにどのような違いが生じるかを,15日間の溶出試験から明らかにした.貧酸素条件下では溶存態リン,全鉄,マンガンの溶出フラックスはそれぞれ,3.05,21.3,10.5 ㎎/㎡/day であり,好気条件よりも大きいことが明らかとなった.一方,硫酸イオンは好気条件の方が貧酸素条件よりも溶出フラックスが大きく,溶存態窒素やシリカは溶存酸素濃度によって違いがないことが明らかとなった.本研究で得られたデータは,今後常態化しうる琵琶湖底層の貧酸素化によって,有機物や栄養塩類,重金属類が底泥から溶出する状況を量的に把握する上で重要な知見となる.