アンピシリン (ABPC),オキシテトラサイクリン (OTC),エリスロマイシン (EM)およびリンコマイシン (LCM)の4抗菌薬の水環境中の挙動に関する基礎データを得るため,耐性菌の分布,土壌やウキクサによる除去,光分解性を調べた.琵琶湖水中の従属栄養細菌に占める50 ㎎/LのABPC,OTC,EM,LCMに対して耐性を有する細菌の割合は,それぞれ4.3,1.9,2.5および26%となった.土壌吸着によって,10 ㎎/LのABPC とOTC は2日間でそれぞれ81%と15%まで減少した.1.0 ㎎/LのOTCとEMは,直射日光下において,5日間でそれぞれ0.5%以下および58%まで減少した.ウキクサを植栽した溶液中の0.1 ㎎/LのABPCとEMは,7日間でそれぞれ28%と21%まで減少した.LCMは土壌吸着,光分解,ウキクサによる除去も確認されなかったことから,水環境中に残留しやすいことが示唆された.
有害物質であるフェノールを用いない迅速簡便なアンモニア態窒素測定法の確立を目指し,連続流れ分析(CFA)による分析法を開発した.試料中の金属イオン等による測定の妨害を防ぐため,エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を添加した.そして,EDTA による発色機構への妨害低減および夾雑物質の影響の防止のためPTFE メンブレンフィルターによる気液分離器を用いた.この気液分離器によって試料中のアンモニアのみをガス状で分離し,サリチル酸インドフェノール法で測定を行うことで,フェノールを使用せず,妨害物質の影響を受けにくい分析が可能となった.本法とフェノールを使用する従来法を用いて海水,工場排水等の測定を行い,両者を比較すると同等の結果を得られることを確認した.また,測定法自体の評価および統計解析の結果,本法と従来法に大きな差はないことを確認した.以上より,本法が従来法と同等の測定能を有し,従来法に代替可能であることが示唆された.
本稿では高濃度窒素成分(NH4-N)と過酸化水素(H2O2)を含有する半導体の基盤洗浄水などのアンモニア過水を亜臨界水熱反応によって無害化する触媒として,Fe,Fe2O3,Zn,CuO,MnO2,V2O5,MoO3,Al2O3,NiO,Mg,MgO,CaO,BaO の13種の非貴金属触媒を探査した.そして選出した触媒を用いた至適反応条件を確認した.触媒としてMgOが選出され,NH4-N とH2O2それぞれの模擬排水濃度5,000 ㎎/Lと10,000 ㎎/L,MgO 0.9 g,振とう数110 rpm,反応温度300℃,反応時間1時間の条件下,NH4-N とH2O2の除去率はそれぞれ32.8%と100%であった.このようにMgOは高濃度窒素除去をなす触媒としてPtと同程度に反応性を大きく促進できることを見出した.