2019 年 48 巻 6 号 p. 334-340
本研究は閉鎖性水域における底質の浄化手法として堆積物微生物燃料電池(SMFCs)に着目した.本研究の目的は2つである.1つ目はSMFCsによる有機物分解促進と嫌気環境改善効果を検討し,底質中の微生物による浄化メカニズムを把握することである.2つ目は,その浄化範囲の拡大のために,マグネタイトの適用を検討することである.実験結果から,得られた電流密度が微生物由来であることを確認し,その割合は50日間の電流密度の積算量の95%であった.またSMFCsを90日間設置して通電と非通電を比較した結果,通電時は酸素消費速度が約24%減少した.さらに,非通電時と比べ通電時のORP(Oxidation Reduction Potential)は極めて高い値を示したことから,SMFCsの設置により,底質中の嫌気環境が大幅に改善できることが明らかとなった.そして適切な量のマグネタイトを添加することにより,浄化範囲が拡大される可能性が示唆された.