環境技術
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消・脱臭剤による臭いの除去
安藤 忠夫
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1991 年 20 巻 5 号 p. 334-339

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抄録

生産量中心の産業成長の代償として, 公害という人間の健康で快適な生活を脅かす事象をもたらし, その防止対策に真剣に取組まなければならない時代に突入している.とりわけ悪臭公害は毎年公害苦情件数の上位を占め行政面でも種々の法制化が行われている.
即ち, 悪臭防止法が昭和46年に制定され, その時には8物質 (アンモニア, 硫化水素, メチルメルカプタン, 硫化メチル, 二硫化メチル, スチレン, アセトアルデヒド, トリメチルアミン) が濃度規制の対象となり平成2年には4物質 (プロピオン酸, ノルマル酪酸ノルマル吉草酸, イソ吉草酸) が追加規制されるに至った.しかし, 悪臭は他の公害現象とは違い, 感覚の問題であり, この感覚が非常に低濃度で悪臭を感知し機器分析の能力を上回っており, さらに悪臭は複合臭で相殺, 相乗現象を伴っている事等から単純な濃度測定のみで悪臭を評価する事は出来ずこの規制方法だけでは問題が多いといわれている.
これらの事から何とか感覚的な測定をと言うことで東京都で三点比較式臭袋法が昭和52年に制定され一躍脚光をあび今では, 30ぐらいの自治体でこの感覚測定法が採りあげられている.こうした行政面での動きとともに当然これを効率良くクリアーしようとする装置が考え出され悪臭対策が種々考案されている.その主なものを列挙すれば,
(1) 吸着や吸収などの物理的脱臭法
(2) 中和, 重合, 酸化還元などの化学的脱臭法
(3) 好気性菌, 土壌菌, 酸素などの生物的脱臭法
(4) 中和作用, マスキングなどの感覚的脱臭法などがあり, 種々の発生源対策に利用されている.これら防止技術のうち (1) や (2) は化学工学上その反応機構や適応性の検討が比較的よく行われており, 悪臭防止装置の設計段階でだいたいの性能が予測できる.しかし今日の悪臭防止技術は特定の限られたガス成分の除去メカニズムに重点をおいた開発となっているのが大半である.しかも実際に悪臭の問題は殆どの成分がきわめて低い濃度で発生しており, こうした除去のみを脱臭技術とすることには問題が残る.
こうしたことから, 植物製精油を成分とする消臭剤を使用する中和消臭法が注目されている.特に低濃度で広域的な雰囲気臭には効果があり, 悪臭の発生状態により添加法, 噴霧法, 気化法, 散布法などが採用されている.もっとも, 従来の中和剤は, それらの消臭機構や機能, 構成成分などに関してはほとんど不明のまま使用されており, 経験的で観念的な説明がほとんどで化学的消臭剤のように明快な説明ができずにいる, 以下に植物精油や中和消臭剤の基本的な考え方を示す.

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