環境技術
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汚泥中AsおよびSeの熱化学特性に関する研究
川嶋 幸徳森田 弘昭池田 裕一
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2002 年 31 巻 11 号 p. 898-906

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抄録

わが国で発生する下水汚泥は発生時固形物ベースで約190万トン (平成12年度) に達し, その約70%以上が焼却処理されている.下水汚泥中には微量の重金属が含有されており, 焼却過程ではその熱化学的特性により様々な挙動をとる.As, Seおよびその化合物は焼却過程で比較的気化しやすく, 気化したAs, Seは飛灰中に濃縮されやすいことが知られている.また, 焼却灰中のAs, Seは他の重金属に比較して溶出しやすい傾向があり, 下水汚泥焼却灰の有効利用にとっての問題のひとつとなっている.
本研究は, 焼却灰中のAs, Se含有量を制御する方法を見出し, 下水汚泥の有効利用を促進することを目的に行ったもので, わが国で広く普及している流動床炉におけるAs, Seの挙動を調査したものである.特に, 本研究では炉内におけるAs, Seの気化および焼却灰等への移行について, その温度特性, 共存物質の影響等に着目して検討を行い, 以下のような知見を得た.
1) 焼却過程におけるSeの挙動は, 脱水時の助剤と灰捕集温度の影響が大きい.高分子系汚泥の場合, 汚泥中Seのほとんどが炉内で気化し, 約200℃またはそれ以下の低温で灰捕集すると大部分のSeが灰へ移行する.一方, 石灰系汚泥では, SeはCaと揮発性の低い化合物を生成していると推定され, 気化することなく焼却灰にとどまることがわかった.
2) Asの熱化学的特性および化学平衡シミュレーションの結果などから, 還元性雰囲気における焼却ではAsは気化しやすいと考えられたが, パイロット施設を用いた還元性雰囲気の焼却実験でもAsの気化は確認できなかった.
3) 焼却灰を加熱することにより, 灰中Seの由来を推定するとともにSeの含有量を低減する技術についての基礎的検討を行った.その結果, 400℃以下では灰からのSeの気化が観察されず, 汚泥焼却時における温度特性とは異なる結果となった.また, 灰中のSeを効率的に除去するためには600℃以上で加熱することが必要であった.

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