環境技術
Online ISSN : 1882-8590
Print ISSN : 0388-9459
ISSN-L : 0388-9459
第8回国際水質汚濁会議論文紹介 (IV)
逆浸透による下水, 2次処理水中の有機物の除去
北尾 高嶺竺 文彦八木 憲彦Edward S.K. ChianSheng S. ChengFoppe B. DewalleP.K.Kuo Powell
著者情報
ジャーナル フリー

1977 年 6 巻 4 号 p. 297-300

詳細
抄録

負荷 (活性汚泥法における1日の餌と微生物との比F/M) と, 総括的有機化合物濃度 (RO流出水のTOC) との関係を検討した.その結果は, 活性汚泥法の操作を, 3次処理法としてのROとの関連で考えることが重要であることを示唆している.たとえば, F/MO.33day-1の活性汚泥処理水を用いたRO流出水のTOCは2.2mg/l (COD5.7mg/l) であったが, F/MO.69day-1の活性汚泥処理水のRO流出水のTOCは, 7.2mg/ (COD19mg/l) と水質が低下した.分子量分布を用いて, 下水, 2次処理水中の有機物の性質を理解するため膜分画とゲル泝過の併用が必要である.分子量, 数10から5万にいたる溶解性有機化合物のスペクトルが, 下水, 2次処理水に見られた.RO流出水の水質は, GCとGC/MSで分析され, 低分子量の脂肪酸, アルコール, フェノール化合物を多く含んでいることが明らかとなった.
従来の膜研究の多くは, 無機物の除去に集中してきたが, 水不足による水再生の必要性より, 逆浸透 (RO) が, 用途の広い分離, 浄化法として考えられるようになり, 最近になって, 処理下水の再利用が注目をあびている (Chain et. a1., 1975) .ROの機構の理解は, 活性汚泥法の有効な操作や, 3次処理計画に役立つであろう.使用する半透膜により, 除去率や透過速度が決まってくるが, 無機物の場合と異なり, 有機物の除去は, 先行する生物処理操作に強く依存する.
2次処理水中の有機物質の分子量分布と, その性状はROを支配する重要な変数であるが (Mastuura and Sourirajan, 1971) , その化学的組成は活性汚泥の操作条件に密接に関係する.しかし, 2次処理水の有機物組成について, あまりわかっていないし, まして, 活性汚泥の操作条件と2次処理水中の残存有機物の膜による除去との関係は, ほとんど知られていない.
本研究の目的は, 膜プロセスによる2次処理水からの有機物の除去および活性汚泥操作条件の変化とROの有機物除去効果の関係である, 特に, 分子量による下水, 2次処理水の有機物の分類およびRO透過液中の有機物の化学組成の同定をおこなった.
本研究での困難は, 有機物の信頼できる分離同定法がないことで, 溶解性有機物の同定された割合は, 下水で75~80%, 2次処理水で32~35%である.Rebhun and Manka (1971) による溶媒抽出による改良法にも問題点があり, 信頼できる分析法が望まれる.しかし, 有機物は, 粒子径や分子量のような総括的パラメータの分布により, おおまかに分類できる.Zuckerman and Molof (1970) , Clesceri (1973) , DeWalle and Chian (1974) などは, Sephadexカラム (ゲル濾過) を用いて, 下水, 2次処理水中の溶解性有機物の分子量分画をおこなった.DeWalle and Chian (1974b) , Mankaet.al., (1974) は, 各分画を固有の化合物や官能基で特徴づけ, IRスペクトルとの比較をおこなった.
分子ふるいモデルの膜を用いるわけだから, 有機物の分子量分布を知ることは重要であり, 本研究では, ゲルクロマトグラフ法を採用した.

著者関連情報
© 環境技術学会
前の記事 次の記事
feedback
Top