脳科学とリハビリテーション
Online ISSN : 2432-3489
Print ISSN : 1349-0044
総説
経頭蓋直流電気刺激法の基礎と応用
田中 悟志
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2016 年 16 巻 p. 35-41

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抄録

頭蓋の外から1mA程度の微弱な直流電流を与える経頭蓋直流電気刺激法(Transcranial Direct CurrentStimulation: tDCS)は,外科手術を行わずヒトの脳活動を修飾する手法である.装置の安全性,簡便性,携帯性が高いことなどから,ここ10年ほど脳卒中リハビリテーション分野で盛んに研究が行われている.脳卒中患者の上肢運動機能に関してはtDCSの有意な促進効果がメタ分析で示されており,今後は多施設による大規模な臨床研究の成果が望まれる.一方,言語機能,下肢運動機能,体性感覚機能など上肢運動機能以外の機能に関してはデータも少なく,今後データの蓄積が必要である.近年はtDCSの効果に関してネガティブ・データも多く報告されている.また,効果の個人差も報告されている.厳密な実験で得られたデータを積み上げることで,tDCSは「何に対して効果があり,何に対して効果がないのか」,また「誰に対して効果があり,誰に対して効果がないのか」を明らかにしていく必要がある.

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© 2016 脳機能とリハビリテーション研究会
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