脳科学とリハビリテーション
Online ISSN : 2432-3489
Print ISSN : 1349-0044
報告
左視床出血により重度感覚障害を呈した一例 —Hemiataxia-hypesthesiaと考えられた症例—
高杉 潤沼田 憲治加藤 邦大
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2007 年 7 巻 p. 21-25

詳細
抄録
重度の体性感覚障害を呈した左視床出血一例について, 画像所見と臨床徴候の分析を行った. CT(発症直後)は左視床の後方部および内包後脚に高吸収域が認められ, 発症後7週では視床後方部から外側に低吸収域が認められた. 発症2週後の神経学的所見では, 意識晴明. 右上下肢の随意運動は保たれ, 病的反射, 腱反射, 視覚・視野障害も所見を認めなかった. しかし右上下肢に重度の体性感覚障害と測定異常を主体とした軽度の小脳性運動失調様症状を認めた. 神経心理学的所見は注意, 記憶, 言語, 失語, 失行に明らかな所見は認められなかった. 動作所見では起居動作は自立. トランスファー, 立位保持, 歩行(平行棒内)は近位監視から軽介助レベルであった. 動作全般に右上下肢の協調運動障害が見られ, 視覚遮断時により増悪した. 以上より本例の臨床徴候は, 皮質脊髄路の障害を免れた, 視床腹外側核および後腹側核の損傷に起因するHemiataxia-hypesthesiaであることが推察された.
著者関連情報
© 2007 脳機能とリハビリテーション研究会
前の記事 次の記事
feedback
Top