脳科学とリハビリテーション
Online ISSN : 2432-3489
Print ISSN : 1349-0044
7 巻
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教育講座
総説
  • 武田 湖太郎, 加藤 宏之
    2007 年 7 巻 p. 5-14
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル オープンアクセス
    NIRS(near-infrared spectroscopy)は近赤外光を頭皮上から照射し, 脳表のヘモグロビン濃度変化を計測する新しい脳機能計測法である. 神経活動に依存して局所脳血流量は増加するため, ヘモグロビン濃度変化を計測することにより局所の脳活動を知る事ができる. 近年, リハビリテーション医学の分野でもその応用が報告されはじめ, その臨床場面での応用が期待されている. 本稿では多くの総説・論文を引用し, NIRSの計測原理とリハビリテーション医学分野での臨床応用例を紹介する.
原著
  • 武田 湖太郎, 五味 幸寛, 今井 樹, 下田 信明, 加藤 宏之
    2007 年 7 巻 p. 15-20
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル オープンアクセス
    脳卒中などで障害された脳では神経ネットワークの再構築が行われていると考えられている. 我々は近赤外分光法を用い, 慢性期の脳卒中患者における麻痺手運動時の大脳皮質内血中ヘモグロビン濃度変化を計測した. 発症後1年以上経過した片麻痺患者7名(右片麻痺5名, 左片麻痺2名), および, 健常成人5名を対象とし, 手指屈曲伸展運動によって活性化する一次感覚運動野を左右半球で比較した. その結果, 健常者および患者の非麻痺手運動時には対側優位の脳活動を示したのに対し, 患者の麻痺手運動時には患者7名中6名で同側の一次感覚運動野が活性化された. これらの現象は脳卒中後に生じた機能代償や再構築の結果生じたと考えられる. また, すべての患者で麻痺手運動時に右大脳半球が活性化しており, 運動イメージによって右中心前回や右上頭頂小葉などが活性化している可能性も示唆された.
報告
  • 高杉 潤, 沼田 憲治, 加藤 邦大
    2007 年 7 巻 p. 21-25
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル オープンアクセス
    重度の体性感覚障害を呈した左視床出血一例について, 画像所見と臨床徴候の分析を行った. CT(発症直後)は左視床の後方部および内包後脚に高吸収域が認められ, 発症後7週では視床後方部から外側に低吸収域が認められた. 発症2週後の神経学的所見では, 意識晴明. 右上下肢の随意運動は保たれ, 病的反射, 腱反射, 視覚・視野障害も所見を認めなかった. しかし右上下肢に重度の体性感覚障害と測定異常を主体とした軽度の小脳性運動失調様症状を認めた. 神経心理学的所見は注意, 記憶, 言語, 失語, 失行に明らかな所見は認められなかった. 動作所見では起居動作は自立. トランスファー, 立位保持, 歩行(平行棒内)は近位監視から軽介助レベルであった. 動作全般に右上下肢の協調運動障害が見られ, 視覚遮断時により増悪した. 以上より本例の臨床徴候は, 皮質脊髄路の障害を免れた, 視床腹外側核および後腹側核の損傷に起因するHemiataxia-hypesthesiaであることが推察された.
  • 揚戸 薫, 高杉 潤, 沼田 憲治, 大賀 優, 村山 尊司
    2007 年 7 巻 p. 27-30
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル オープンアクセス
    今回, 著明な情動障害を呈した脳底動脈瘤術後脳梗塞例について, 脳画像と臨床徴候の経時的変化を追って分析した. 症例は31歳, 女性. 発症後2ヶ月のMRI所見は, 右側脳室の拡大, 右海馬・扁桃体の萎縮, 右視床前部および内側領域に梗塞巣と左視床前部および内側部に動脈瘤による圧迫を認めた. 情動障害については, 幼児化傾向, 易興奮性, 多幸を特徴とした. 発症後1年3ヶ月後では, 多幸傾向は軽度残存したが, 幼児化傾向, 易興奮性は消失した. MRIでは, 右視床と右辺縁系には依然病変を認めたが, 左視床では所見は認められなかった. 視床病変に基づく情動障害例は, 一側性病変では稀で両側性に多く見られ, 本症例もこれら障害像と酷似していた. 以上から本症例の一連の情動障害の原因病変は, 右側の視床および辺縁系に加え, 左視床の関与によって, より顕著で特異的な, かつ遷延した障害を呈したと考えられた.
紹介
  • 徳田 良英
    2007 年 7 巻 p. 31-34
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/11/13
    ジャーナル オープンアクセス
    拙稿は「脳機能とリハビリテーション」の研究の中で, 特に療養環境に着目し, 症状が環境の影響を受けやすいこと, また, 物理的環境そのものが治療的役割を果たすことなどについて行動科学や建築計画・デザインなどの分野での知見を紹介するものである. 筆者の立場は医科学的に脳そのものを直接の主題としているのではなく, むしろ空間や雰囲気といった無機質的なもの(広義に「環境」)と脳がさまざまな相互作用をしていることを前提に, 療養環境によるヒトの行為行動の変容を行動科学や経験論を踏まえてコンテクストを読み取ることを主眼としている. 本論の解説にあたり本研究会の主たる会員層であるコ・メディカルの専門職の方々に療養環境の重要性について興味を抱いてもらえるように, 平素でわかりやすく述べることを心がけた. そのため内容が科学的な高尚さに欠けている点をお詫びするとともに, 不足の内容は是非成書をご覧頂きたい.
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