日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: OR-8-3
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発がん・突然変異・遺伝子不安定性1
Mlh1欠損マウスに発生するT細胞白血病のIkaros遺伝子の変異解析
*柿沼 志津子小玉 陽太郎甘崎 佳子山内 一己東海林 裕小島 周二新井 正美今岡 達彦西村 まゆみ島田 義也
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抄録
【目的】DNAミスマッチ修復(MMR)遺伝子の欠損は、複製時に生じるミスマッチによってがん関連遺伝子にフレームシフトや点突然変異を蓄積する。このMMR遺伝子の欠損は、ヒトの遺伝性非腺腫症性大腸癌(HNPCC)の原因であり、TGFbRIIBAXなどのモノヌクレオチドリピートにフレームシフト変異が起こる。一方、MMR遺伝子のホモ欠損タイプ小児ではTまたはB細胞白血病を起こすことが報告されているが、その標的遺伝子はまだ明らかではない。昨年の本大会では、Mlh1-/-マウスのT細胞白血病ではTgfbrIIのフレームシフト変異が無く、Msh2-/-マウスのT細胞白血病とは、発がんの原因遺伝子が異なることを示した。そこで本年は、Mlh1-/-マウスのT細胞白血病において、発がん原因遺伝子としてIkarosに着目し、その変異頻度とスペクトラムについて検討した。
【材料と方法】Mlh1-/-マウスに自然発生したT細胞白血病のIkarosの変異について解析した。
【結果と考察】自然発生T細胞白血病の71%で、Ikarosのタンパク発現が欠失していた。その原因は、すべてIkaros遺伝子内のモノヌクレオチドリピート配列の一塩基欠失のフレームシフト変異で、86%のT細胞白血病に認められた。この変異は、ヒト白血病や放射線または化学発がん剤誘発マウスT細胞白血病で報告されたIkarosの変異タイプとは明らかに異なっていた。すなわち、Mlh1-/-マウスのT細胞白血病は、MMR欠損に依存したIkarosの変異が原因であることが明らかになった。
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© 2006 日本放射線影響学会
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