抄録
[目的]Heat-shock protein 90 (Hsp90) は ubiquitous 分子シャペロンタンパク質で、様々なタンパク質の安定、活性化や細胞周期チェックポイント、シグナル伝達機構、転写の調節と関連している。我々はプラスミドによりIGF-IRを過剰発現させたHeLa細胞(HeLa-IGF-IR)を用いて、Hsp90 阻害剤(17AAG)による放射線増感効果を検討した。
[方法] Hela 及びHeLa-IGF-IR 細胞を150nMの17-AAGで24時間前処理し放射線感受性をコロニー形成法によって評価した。またMTT法、SLGA(senescence-like growth arrest)、さらにDNA修復酵素に対し免疫蛍光法も行い、放射線感受性を調べた。
[結果と考察] HeLa-IGF-IR細胞はHeLa細胞と比較し有意に放射線抵抗性を示したが、150nMの17-AAGを加えることによって、HeLa-IGF-IR細胞の放射線抵抗性は失われた。HeLa-IGF-IR細胞では17-AAGを加えることで、放射線照射後のPARP発現量が減少、またアポトーシスも増加することも確認した。MTT assayにより、17-AAG付加後、HeLa-IGF-IR細胞はHeLa細胞より成長が抑制され、spheroid 形成も抑制されるた。17-AAGにより、HeLa-IGF-IR細胞は放射線照射後のγ-H2AXと p-ATMのfoci数がHeLa細胞より増加した。IGF-IRを過剰発現しているような腫瘍では、IGF-IRタンパクを安定化するHsp90 阻害剤を用いることにより、下流のPI3-K, MAPKによる生存シグナル伝達経路を阻害し、アポトーシスとSLGAが増加することで、有効な放射線増感につながる可能性があり、臨床応用が期待される。