日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: CP-111
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放射線応答とシグナル伝達
紫外線誘発アポトーシスにおけるK+イオンチャンネルの関与
*秋元 志美藤原 好恒藤原 昌夫谷本 能文鈴木 文男
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抄録

紫外線誘発アポトーシスはDNA損傷がトリガーとなることが知られているが、紫外線に対する細胞の反応は細胞種によって異なる。例えばアポトーシスに特徴的なDNA断片化の泳動パターンが見られるのは、Jurkat細胞においては照射後3時間であるが、HeLa細胞では照射後48時間である。このような紫外線によるアポトーシス誘発の時間的違いの原因を探るため、本研究ではJurkat細胞とHeLa細胞を用いて、照射後の細胞の初期変化について調べた。
【材料と方法】実験にはJurkat細胞とHeLa細胞を用い、両者にほぼ同程度の致死効果を与える紫外線(254 nm)を照射した。照射後、様々な時間細胞を培養した。その後、ギムザ染色により紫外線照射後の細胞の形態変化を調べるとともに、フローサイトメトリーにより細胞死の出現動態を解析した。
【結果と考察】Jurkat細胞及びHeLa細胞ともに細胞の大きさは広い分布を持っているが、Jurkat細胞では紫外線照射後に速やかに小さな細胞の割合が増加することがわかった。一方HeLa細胞ではこのような現象は見られていない。Jurkat細胞に見られた現象は、アポトーシスの初期過程に見られる細胞収縮に起因するものと考えられる。この現象は紫外線により誘発される細胞膜の膜電位変化や、細胞内K+イオン濃度の変化により起こることが知られている。そこでJurkat細胞における紫外線誘発アポトーシスに対するK+イオンチャンネル阻害剤の効果を調べたところ、Jurkat細胞ではアポトーシスが抑えられることがわかった。しかしJurkat細胞と同じ条件でK+イオンチャンネル阻害剤をHeLa細胞に添加した場合、その効果は見られなかった。このことからJurkat細胞において見られる非常に速い紫外線誘発アポトーシスは、紫外線照射により生じたK+イオンチャンネルの変化がトリガーなっていることが示唆された。

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© 2007 日本放射線影響学会
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