日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: EO-039
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放射線効果の修飾因子
DMSOによる放射線防護効果の機構
*菓子野 元郎鈴木 実木梨 友子増永 慎一郎小野 公二渡邉 正己
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抄録

放射線照射された細胞では、活性酸素種などの短寿命ラジカルが大量に生成し、それらがDNA損傷をはじめとする様々な障害を誘発すると考えられている。DMSOは、照射に伴い生成するヒドロキシラジカルを軽減させ、放射線防護効果を示すと理解されているが、DMSOの作用は多岐に渡るので、DMSO処理細胞が如何にして放射線防護作用を示すのかは、依然、不明な点が多く残されている。そこで我々は、細胞毒性と酸化ストレス抑制作用をほとんど示さない0.5% DMSOで処理された細胞の放射線防護効果について検討を行った。その結果、0.5%DMSOで処理されたCHO細胞は、放射線により誘発する微小核生成が抑制され、生存率の上昇が見られた。しかし、興味深いことに、Ku80を欠損し非相同末端結合能に異常を持ち放射線高感受性を示すxrs5細胞では、同様のDMSO処理により放射線防護効果が見られなかった。DNA-PKcs欠損マウス(Scid)細胞でも、DMSO処理による防護効果は見られなかった。このことは、DMSOによる放射線防護効果が、DNA二重鎖切断修復機構と関連していることを示唆している。さらに、DNA二重鎖切断部位を反映すると考えられる53BP1のフォーカス形成を調べたところ、照射15分後における53BP1フォーカス数は、0.5%DMSO処理細胞と未処理細胞で変わらなかった。一方、照射1時間後から2時間後にかけて、DSBの修復に伴う53BP1フォーカスの消失が見られたが、0.5%DMSO処理細胞の方が未処理細胞に比べ、その消失速度が早いことがわかった。これらの結果は、DMSOによる放射線防護効果が細胞内活性酸素種の軽減効果に起因するものではなく、非相同末端結合修復をはじめとするDNA二重鎖切断修復機能の活性化に起因している可能性を示唆する。

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© 2007 日本放射線影響学会
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