日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: HP-258
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被ばく影響とその評価
セミパラチンスク核実験場でのソ連最初の原爆実験による放射能雲の通過位置とフォールアウト沈着パターン
*今中 哲二福谷 哲山本 政儀富田 純平坂口 綾遠藤 暁田中 憲一星 正治
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抄録
旧ソ連セミパラチンスク核実験場の境界から60kmに位置するドロン村は、1949年8月29日に実施されたソ連最初の原爆実験により大きな放射能汚染を受けたことで知られている。ドロン村の外部被曝(積算空気線量)は、従来の評価によると約2Svとされてきたが、TL測定など最近のデータに基づく評価は約0.5Svである。この違いの原因として、従来の評価は放射能雲の中心が通過した場所での線量率測定データに基づく値であり、ドロン村は中心軸からいくぶん離れた位置にあったことが指摘されている。我々は2005年10月、ドロン村を通過した放射能雲の位置と巾を決定するため、想定される中心軸との直交線上など26カ所で土壌サンプリングを実施し137Csと239,240Puの測定を行った。測定結果を、直交線上でインベントリー値(Bq/m2)としてプロットすると、137Csと239,240Puのいずれについても中心軸近辺でピークを示す空間分布が認められた。バラツキはあるもののそれらの分布はガウス関数でうまく近似され、放射能雲中心の通過位置はドロン村北方の約2kmで、雲の巾のσ値は2~2.2kmとなった。グラウンドゼロ地点からドロン村までの距離110kmを考えるとこの雲巾は極めて小さな値である。ガウス関数フィッティングに基づく中心軸上での137Cs沈着量は15kBq/m2(1949年換算値)であり、ドロン村(中心軸から1.8-2.6km)での平均137Cs沈着量は約6kBq/m2となった。一方、以前に得られているドロン村内外49ヵ所の土壌サンプルに基づく平均137Cs沈着量は8.5kBq/m2であり、今回の空間分布に基づく値とまずまず一致した。
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© 2007 日本放射線影響学会
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