日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: X3-7
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加速器テクノロジーによる医学・生物学研究 -群馬大学21世紀COEプログラム-
重粒子線照射による細胞形質の特徴的変化についてウイルスを利用した解析
*星野 洪郎清水 宣明大上 厚志田中 淳SAHA Narayan M品川 雅彦大槻 貴博森 隆久Hoque ArifulIslam Salequl浜田 信行小林 泰彦和田 成一舟山 知夫鳴海 一成
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抄録
重粒子線照射によるがん治療では、X線照射には見られない優れた治療効果が報告されているが、多くの実験系では各種放射線の生物学的効果には著明な差が認められていない。しかし、重粒子線照射により、細胞形質の特異的変化が起きていることが予想される。この点を解明するため、ウイルス感受性を主な指標として解析を行った。
(1) 重粒子線照射細胞のHIV-1感受性亢進  重粒子線照射によりヒト培養細胞のヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)に対する感受性が亢進した。このような現象は、ほかの放射線の照射では見られなかった。そのメカニズムを明らかにするため遺伝子発現の変化について解析した。NF-κBの増加が見られ、Ku-80、PARPなどの発現は低下した。
(2) 重粒子線照射によるレトロポゾン関連遺伝子への影響の解析  レトロトランスポゾンの一種LINEはヒトゲノムの17%を占め、レトロウイルス様の構造をしている。重粒子線照射によりその転移が促進されるか、検出できる細胞系を樹立し検討した。各種放射線による照射で、LINEのレトロポジション(転移)が増加したが、その頻度には大きな差は認めなかった。
(3) pprA遺伝子導入細胞の作成と放射線感受性の検討  D. radiodurans菌は、電離放射線に極めて抵抗性な細菌である。この責任遺伝子のひとつとしてpprA が同定された。PprAタンパク質は、DNA切断部位に結合し結合反応を促進する。PprAタンパク質を利用することで、重粒子線照射の特徴を解析できるか検討した。まず、pprA遺伝子をヒト細胞に導入し発現細胞を分離した。PprAタンパク質は細胞内で特異的な局在を示し、遺伝子導入細胞では放射線照射に軽度に抵抗性となった。
 以上のように重粒子線照射による特徴的な変化と各種放射線に共通の変化を培養細胞系で同定した。
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© 2007 日本放射線影響学会
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