抄録
【目的】ヒト膠芽腫より樹立したCGNH-89細胞を用いて、X線及び重粒子線照射後の細胞形態、超微形態および免疫組織化学的所見の変化について検討した。【方法】ヒト膠芽腫細胞(CGNH-89)に、X線及び重粒子線を照射して標本を作製し、HE染色、免疫組織化学染色を施行した。また、超薄切片を作製し、超微形態像を透過型、走査型電子顕微鏡にて観察した。【結果】光顕的には線量依存的に、生存細胞数および核分裂像が減少し、濃縮核と好酸性細胞質を持つ細胞変性の所見が増加した。またMIB-1陽性率は、照射後に一過性に減少し、一定時間経過後に増加した。免疫組織化学染色による細胞骨格蛋白の分布と発現量には目立った変化は認められなかった。電子顕微鏡観察ではCGNH-89細胞は細胞内小器官が豊富に認められ、照射により、その核と細胞のサイズが増大し、ミトコンドリアの膨化、細胞内フィラメントの増加、二次性ライソゾームの出現が見られた。【結語】照射により、残存する腫瘍細胞は変性を起こし、細胞分裂を停止している可能性が示唆される。X線と重粒子線照射で腫瘍細胞の変性していく形態に関しては同様の変化が起こっていると考えられる。