日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W6R-363
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環境生物・生態系の放射線影響を科学する
ヤマトヒメミミズ (Enchytraeus japonensis) の放射線感受性
*久保田 善久中森 泰三坂内 忠明渡辺 嘉人吉田 聡
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抄録
生態学的重要性と環境影響評価の材料としての扱いやすさの点から、ミミズは環境影響評価研究に広く用いられてきており、レファレンス生物として採り上げることがICRPにより検討されている。1991年に発見されたヤマトヒメミミズ(Enchytraeus japonensis)は通常の実験室飼育条件下では自切による無性生殖によってのみ増殖し、特異条件の飼育によって生殖巣が出現し、有性生殖を行うミミズである。このヤマトヒメミミズを使った放射線の研究としては、宮地らが極低線量のベータ線により有性化するという報告を行っている(Journal of Environmental Radioactivity, 2005)が、他に放射線の影響を調べた報告はない。今回、無性生殖するヤマトヒメミミズに及ぼす放射線の影響を調べたので報告する。農業生物資源研究所より供与されたヤマトヒメミミズを寒天培地上で飼育し、体長1cm程度に成長したミミズを選別し、10個体ずつ新しい寒天培地に移した後γ線を照射し、30日後の個体数を算定したところ、約20Gyで個体数が50%になる線量反応曲線を描いた。また、照射後1日目に3H-thymidineを添加した1%メチルセルロースにミミズを移し、24時間後にDNAに取り込まれた3H量を測定したところ、3-4Gyで取込量が50%に減少した。7Gyの照射では、照射後1~2日の間の3H-thymidine取込量は非照射の2-3%に減少するが、以後取込量は急激に増加し、照射後3~4日でほぼ非照射群と同程度になり、照射30日後の個体数も非照射と有意な相違は認められなかった。以上の結果から、ヤマトヒメミミズの細胞レベルの放射線感受性は哺乳類細胞より若干低い程度であるが、僅かに生き残った細胞の旺盛な増殖により個体レベルでの放射線の影響は観察しにくいことが分かった。
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© 2007 日本放射線影響学会
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