日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: AO-3-4
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DNA損傷・修復
トリ細胞におけるミスマッチ修復遺伝子の紫外線損傷修復に対する機能
*田野 恵三森 俊雄中村 純荒川 央武田 俊一渡邉 正巳
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抄録
脊椎動物におけるミスマッチ修復(MMR)の損傷認識は,3種類のサブユニットによる2種のヘテロダイマー,MutSα, MutSβに依存している.MSH2とMSH6のヘテロダイマーであるMutSαは,主に塩基-塩基ミスマッチや1塩基挿入,欠失ミスペアを認識し,MSH2とMSH3からなるMutSβは,数ヌクレオチドループ欠損や挿入ミスペアを認識する.異なる損傷に対するこれら3つのサブユニットの認識特異性について細胞レベルでの解明を目的に,トリDT40細胞でMsh2,Msh3及びMsh6遺伝子を破壊し,種々の損傷における機能を細胞生物学的に解析した.1)紫外線に対しては,MutSα,β双方の構成因子であるMSH2欠損細胞のみが感受性を示した.一方,MutSαの構成因子であるMSH6とMutSβの構成因子であるMSH3の単独欠損株では,紫外線感受性は認められなかった.2)ヌクレオチド除去修復 (NER)関連のXpa遺伝子とMSH2とのダブルノックアウト細胞では,UVに対してAdditiveな感受性が認められた.これは,UV照射で誘導されるヌクレオチド損傷の修復に,MSH2がNERとは独立して相補的に関与していることを示している.3)紫外線照射後のチミンダイマー,6-4光産物の修復は,損傷乗り越え修復遺伝子の一つであるRad30破壊細胞と同じように,照射直後の修復は認められなかった.以上のことから,紫外線損傷修復においてMMRはNERと独立しており,損傷乗り越え修復と同様に複製後修復過程で関与し,その損傷認識は3つのサブユニットのうちMSH2に依存していることが示された.現在,Msh2,3,6の多重遺伝子破壊株を作成することで,これらサブユニットの相互作用の解析を進めている.
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© 2008 日本放射線影響学会
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