日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: AO-4-1
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DNA損傷・修復
ヒトポリメラーゼη R61残基の8oxodGTP取り込み特異性への寄与
*片渕 淳佐々 彰清水 雅富益谷 央豪花岡 文雄能美 健彦
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抄録
電離放射線によりDNA前駆体であるヌクレオチドプール中のdNTPは酸化されうる。これらはDNAに取り込まれることで、突然変異や細胞死の原因となると考えられている。我々はこれまでに酸化dNTPの取り込みにYファミリーDNAポリメラーゼが大きく関与している可能性を示してきた。中でもヒトポリメラーゼη (hPolη)は通常dNTPと同程度の8oxodGTPの取り込み活性を示す。本研究では、hPolηが8oxodGTPを取り込む機構を調べるために、61番目のアルギニン(R61)に着目し、その酸化dNTP取り込み特異性への影響を検討した。古細菌のDinBホモログの一つであるDpo4-DNAの共結晶および出芽酵母Polηの結晶構造とから推測されるhPolηのタンパク質構造において、R61はdNTPに近接すると考えられる。R61を置換した変異体タンパク質の酵素活性を調べた結果、R61をリジンに置換した変異体(R61K)は野生型と同等の活性を示した。また損傷乗り越え活性についても同等であった。しかし、野生型に比べR61Kの酸化dNTP取り込み特異性は顕著に異なった。R61Kは8oxodGTPをCの向かいに取り込む活性が上昇した。同様に8oxodATPをTの向かいに取り込む活性も上昇した。同じく酸化プリン損傷である2OHdATPを取り込む特異性は野生型とほぼ同じであった。また鋳型上の8oxodGあるいは8oxodAに対する損傷乗り越え活性は野生型とR61Kで変わらなかった。従って、R61KはC8が酸化されたdNTPの取り込み特異性のみ変化することが示された。これらの結果から、R61は8oxodGTP及び8oxodATPの取り込みの際に変異を起こしやすくしていることが示された。
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© 2008 日本放射線影響学会
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