日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: AP-6
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DNA損傷・修復
直せないdsb (H2AX foci)の消長キネティクスとその生物学的効果
*野田 朝男大峰 秀夫平井 裕子児玉 喜明中村 典
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キーワード: dsb repair, H2AX foci, 53BP1
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抄録
In vivoや、 in vitroひばくを経験した細胞や組織において、傷の修復が完全でないにも関わらずアポトーシスを起こすには至らない場合は、修復できないdsbが長期に渡り存在し続けているのではないだろうか?あるいは、アポトーシス耐性細胞中で、修復されないdsbはどのような運命をたどるのか?このことを検証するため、静止期及び対数増殖期のヒト正常2倍体線維芽細胞細胞 (NHDF) におけるX線誘発dsbの消長を長期間にわたり観察した。NHDFをMEM+0.1%FCS培養条件にてG0に保持すると、増殖が抑制された状態での細胞維持が1年以上可能である。そこで、 種々の線量及び線量率にてX線照射し、その後に生じるH2AX fociの消長キネティックスと、このfociに含まれる蛋白質の同定を試みた。H2AX (/53BP1/ATM) fociは照射後短期間で形成され数時間の内にdsbの修復に伴ってその大部分が消失し、細胞が回復する1~2日後にはほぼ対照レベルまでに低下した。 1 Gy 程度までの照射では長期に渡り残存するH2AX fociはごくわずかであるが、さらに線量を上げると修復されないfociが線量依存的に増加することが観察された。修復されないfoci数は照射後数日(1wk)くらいで固定化され、その後約8週間まで追跡したが安定して保持されていた。対数増殖期の細胞でも高線量照射では増殖が停止し、静止細胞の場合と同様の結果が得られた。修復できない傷 (dsb)の生成効率とその細胞の生存率曲線、ならびに照射線量の関係を求めてみると、平均1ヒットで細胞が致死に至ると考える古典的な標的理論(1ヒット性1標的説)とほぼ一致することが明らかとなり、今回観察した直せない傷は細胞死(分裂死)の直接原因である可能性が示唆された。
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© 2008 日本放射線影響学会
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