日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: AP-10
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DNA損傷・修復
ATM Kinase Inhibitorを用いた温熱感受性の検討
*井上 幸平川田 哲也齋藤 正好劉 翠華
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抄録
(目的)温熱療法は癌治療の現場において治療法のひとつとしてその有効性が広く認識されている。しかし、温熱刺激による細胞死の分子機構については未知の部分が多い。最近では温熱の細胞死における主因はたんぱく質変性を介したDNA二本鎖切断であるとする説が有力となっている。ATMはこのDNA二本鎖切断修復過程おいて中心的役割を果たす。そこで今回我々はATM特異的阻害剤であるKU55933を用いて正常細胞およびがん細胞における温熱感受性についての検討を行った。 (方法)コンフレントなヒト正常線維芽細胞AG1522およびヒト骨肉腫細胞MG63を使用した。温熱処理は45度20分とし、KU55933は照射する1時間前に20μMを投与した。X線照射は温熱処理直後に行った。0Gyから6Gyにおける照射単独、照射+温熱、照射+KU55933、照射+温熱+KU55933での生存率曲線をコロニー形成能から作成した。また45度での温熱処理時間を20分、40分、60分と変化させ、温熱単独および温熱+KU55933併用での生存率曲線を作成した。 (結果および考察)いずれの実験においても、正常細胞、がん細胞ともにKU55933により温熱感受性は有意な上昇を認めた。この結果は温熱とATMが密接に関係していることを意味しており、温熱の細胞死がDNA二本鎖切断であるとする説を支持するものであると思われた。
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© 2008 日本放射線影響学会
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