日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: AP-17
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DNA損傷・修復
複製フォークでのNBS1の新規役割
*柳原 啓見松本 結実森 俊雄立石 智小林 純也小松 賢志
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抄録
ナイミーヘン染色体不安定症候群 (NBS) は放射線高感受性、染色体不安定性、高発がん性を特徴とする常染色体劣性の遺伝病である。患者由来細胞は電離放射線に高感受性でありAtaxia Telangiectasia細胞とその細胞学的特徴の多くを共有している。NBSの原因遺伝子NBS1はATM依存的に放射線照射後の細胞周期チェックポイントや相同組換え修復(HR)に機能する。最近、NBS患者由来細胞は、DNA複製フォーク停止時に機能するATR遺伝子に異常が認められるSeckel症候群由来細胞とも類似することが報告された。ATMと同じPI3-kinaseファミリーであるATRはNBS1と相互作用し、Hydroxyurea処理や紫外線照射により生じた複製フォーク停止およびそれに伴うDNA損傷の修復やチェックポイント制御に重要な役割を果たしていると考えられている。さらにNBS1複合体はS期の非照射細胞の核内においてフォーカスを形成することが知られている。このフォーカスはPCNAと共局在することからDNA複製フォーク部位において形成していると考えられている。しかしS期におけるNBS1の機能は不明である。  そこでNbs1欠損マウス細胞を用い、紫外線損傷応答におけるNBS1の機能解析を行った。Nbs1欠損マウス細胞は、紫外線に感受性を示し、PCNAのユビキチン化やpol etaのフォーカス形成に異常を示した。さらにNBS1は紫外線によって誘発されるDNA損傷部位への集積がみられた。これらの結果から、NBS1は複製フォークに存在し、HRだけでなく損傷乗越え修復にも関与し、紫外線損傷応答を促進している可能性が示唆された。
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© 2008 日本放射線影響学会
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