日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: CO-2-1
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放射線発がん
放射線照射マウスの造血細胞における白血病特異的遺伝子変異の検出
*伴 信彦柿沼 志津子大町 康甲斐 倫明
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抄録
C3H/HeマウスにX線を3Gy照射すると、20~25%の誘発率で骨髄性白血病を発症する。白血病化にはSfpi1遺伝子の変異が関与しているが、当該変異は極めて特異的な点突然変異であり、放射線のDNA損傷作用によって生じるとは考えにくい。そこで、この変異が照射とは無関係に一部の個体に存在するのか、1年以上におよぶ潜伏期間の中で照射依存的に生じるのかが問題となる。それを実験的に明らかにするためのアプローチとして、昨年度の本学会では、正常細胞に混在するごく少数の変異細胞をwild-type blocking PCR法によって増幅・検出することを試み、変異細胞の存在比が10-4以上であれば検出可能であることを示した。今回は、放射線を照射後長期間飼育したマウスの試料にこの手法を適用して、潜在する変異細胞が検出されるかどうかを調べた。
8週齢のC3H/HeN雄マウスに137Cs γ線を3Gy照射し56週間飼育したもの、および同一週齢の非照射マウスを用いた。いずれも病理解剖によって白血病を発症していないことを確認した上で、大腿骨骨髄と脾臓からDNAを抽出し、0.3μg分を鋳型としてPCRを行った。Sfpi1エクソン5の205bpの領域を増幅するプライマーを設計し、野生型の増幅を抑えるために、白血病における変異のホットスポットをカバーする11merのLNA(locked nucleic acid)を反応溶液に加えた。耐熱性DNAポリメラーゼには、5'→3'エキソヌクレアーゼ活性を欠くStoffel fragmentを使用した。LNAによるマスキングは不完全であるため、40サイクルのPCRの後にFsp Iで処理して野生型の増幅産物を切断し、アガロース電気泳動を行った。これまでに照射群12匹、非照射群6匹のDNA試料を分析したところ、照射群の1匹について、脾臓から変異が検出された。
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© 2008 日本放射線影響学会
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