日本静脈経腸栄養学会雑誌
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Print ISSN : 2189-0161
原著
化学療法中の経時的に変化する味覚異常におけるテーストディスク®を用いた客観的味覚評価
伊沢 由紀子井田 智川名 加織中濱 孝志望月 宏美縄野 一美速水 克熊谷 厚志峯 真司比企 直樹
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2017 年 32 巻 3 号 p. 1168-1173

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抄録

【目的】がん化学療法中の約6割に味覚異常が生じるとされるが味覚異常を客観的に評価した報告は乏しい。そこで化学療法中の味覚の経時的変化を、味覚検査用試薬と食事アンケートにて評価した。【対象および方法】2014年1月から2015年10月まで、がん研有明病院にてCyclophosphamide、Hydroxydaunorubicin、Oncovin®-vincristine、Prednisolone (以下、CHOPと略) 療法とRituximab (以下、Rと略)-CHOP療法を施行した悪性リンパ腫の患者45名にテーストディスク®を用いて3味質 (甘味、塩味、苦味) の味覚テストと食事アンケート調査を行った。【結果】塩味は、1コース後に11名 (25%) 、3コース投与直前に13名 (33.3%) 、6コース投与直前に14名 (35.9%) の患者で異常を示し、治療を重ねるごとに有意に鈍化した (p<0.05) 。その他の味質では有意な変化は認めなかった。アンケート調査でも塩味に関する味覚の変化を感じる患者が治療継続に伴い増加した。【結論】化学療法中には塩味の認知閾値が有意に低下し、次第に塩味の強い食事を求める傾向にあった。

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© 2017 日本静脈経腸栄養学会
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