日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: DP-4
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低線量・低線量率
低線量率γ線連続照射マウス脾臓のヘルパーT細胞比率とT細胞増殖応答の変化
*高井 大策外舘 暁子一戸 一晃小木曽 洋一
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抄録
我々は以前、日線量20 mGy の低線量率γ線を約400日間、集積線量8 Gyまで連続照射したB6C3F1マウスでは寿命が短縮することを報告し、この寿命短縮が早期の腫瘍死によることが示唆された。早期腫瘍死の機構の一つとして、腫瘍細胞の増殖抑制や排除に関わる免疫系に生じた変化が考えられる。そこで今回、3系統(C57BL/6、 C3H/HeN、 B6C3F1)のマウスを用い、免疫細胞のうち特にT細胞に着目し、腫瘍免疫や炎症との関係が示唆されているヘルパーT(Th1、Th2)細胞の構成比と、マイトジェン等の刺激に対する増殖応答能を調べた。マウスには、高線量率(900 mGy/min)、中線量率(400 mGy/22h/day) 、低線量率(20 mGy/22h/day)のγ線をそれぞれ照射(集積線量1 Gy~8 Gy)し、脾臓中のT細胞の解析を行った。
高線量率γ線照射後にはヘルパーT細胞の割合の増加やT細胞増殖活性の低下が観察された。中線量率γ線照射後にはヘルパーT細胞の割合には大きな変化は見られなかったものの、T細胞増殖活性は有意に低下していた。一方、低線量率γ線照射では系統によりこれらの反応は異なっていた。C57BL/6とC3H/HeNマウスでは、集積線量8 Gy未満でヘルパーT細胞の割合やT細胞増殖活性に変化は認められなかったが、B6C3F1マウスでは集積線量1 GyでT細胞増殖活性の低下、集積線量2 GyでTh2細胞の割合の増加が観察された。
これらの結果から、高・中線量率放射線照射同様に低線量率放射線の連続照射でも免疫系に変化がもたらされること、および免疫応答には明らかな系統差があることが示された。この免疫系の変化は、低線量率γ線を連続照射したB6C3F1マウスでみられた早期の腫瘍死による寿命短縮につながる可能性がある。本記載事項は青森県からの受託事業により得られた成果の一部である
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© 2008 日本放射線影響学会
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