日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: EO-1-3
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放射線治療・修飾
DMSOによる放射線防護効果はDNA-PK依存的修復に依存する
*菓子野 元郎漆原 あゆみ児玉 靖司小林 純也劉 勇鈴木 実増永 慎一郎木梨 友子渡邉 正己小野 公二
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抄録

我々は、DMSOによる放射線防護効果が、放射線による間接作用の抑制ではなく、DNA-PK依存的なDNA二重鎖切断修復の活性化によりもたらされているという仮説の検証を行った。細胞は、マウス由来細胞のCB09、及びそのDNA-PKcsを欠損するSD01を用いた。DMSOの濃度は、1時間処理しても細胞毒性がなく、放射線防護効果が大きく現れる2% (256 mM)とした。DMSO処理のタイミングは、照射前から1時間とし、照射直後にDMSOを除いた。放射線防護効果については、コロニー形成法による生存率試験及び微小核試験法を用いて調べた。DMSO処理細胞により放射線防護効果が現れることが、CB09細胞の生存率試験により分かった。微小核試験においても、同処理により、微小核保持細胞頻度が有意に抑制された。これに対して、DNA-PKcs欠損細胞(SD01)では、同処理による放射線防護効果がほとんど見られなかった。DNA-PKの有無がDMSOによる防護効果の機構に関わる可能性が考えられるので、照射15分後から2時間後までDNA二重鎖切断修復の効率を解析した。その結果、DNA二重鎖切断部位を反映すると考えられる53BP1のフォーカスの数は、照射15分後ではDMSO処理により約10%減っていた。これに対し、照射2時間後ではDMSO処理により約30%のフォーカス数の減少が見られ、照射15分後よりも2時間後に残存するDNA二重鎖切断の方が、DMSO処理により大きく軽減されることが分かった。これらの結果は、放射線照射により誘発されたDNA二重鎖切断生成がDMSOにより抑制されるわけではなく、照射直後からスタートするDNA-PKcsに依存したDNA二重鎖切断修復機構がDMSOの照射前処理により効率よく行われている可能性を示唆している。

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© 2008 日本放射線影響学会
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