抄録
背景:我々はこれまでに成熟神経細胞はX線照射により神経細胞死(アポトーシス)を誘導されないことを明らかにしている。しかしながら、頭部への放射線治療あるいは放射線被爆により、様々な脳機能障害を引き起こすことは臨床的に知られている。そこで今実験は成熟神経細胞の樹状突起細胞への影響に着目し、蛍光免疫染色による解析を行った。
方法:初代神経細胞培養は低密度海馬培養法(Banker Methods)を用いた。神経細胞を21日目まで培養し、X線照射を 30Gyを施行した。照射直後に4%パラホルムアルデヒドで固定し、樹状突起スパインの構造蛋白でF-actin細胞骨格のdrebrinとシナプス前マーカーのSynapsin Iを蛍光免疫染色した。撮影された画像は,MetaMorph Software (Universal Imaging, West CHester, PA,) を用い解析した。各々の蛋白で樹状突起上の平均信号強度の2倍以上を示す集積部位をクラスターと定義した。
結果:各々の実験では30個の樹状突起を解析した。樹状突起100μm中のdrebrinのクラスター数は、コントロールの124.16個から、X線照射により97.66個と有意に減少した(P=0.006). Syn1の100μm中のクラスター数は、コントロールの101.23個から、X線照射により113.14個と有意な変化を認めなかった(P=0.091).
結語:X線照射により樹状突起スパインの構成蛋白のクラスター数の減少を認めた。照射によるスパインの形態変化でシナプス機能不全起こる可能性が示唆された。