日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: FO-1-1
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被ばく影響・疫学
長崎の原爆被爆者から得られた歯試料のESR測定
*中村 典平井 裕子児玉 喜明朝長 万左男飯島 洋一三根 真理子奥村 寛
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抄録
長崎大学で収集保管されてきた長崎被爆者から寄贈された11本の奥歯について、電子スピン共鳴法(ESR)により、被曝線量の評価を行った。測定の対象は、奥歯で30mg以上のエナメル質があり、ドナーは被曝時年齢が10歳以上、DS86推定線量がある人(LSS対象者)とした。被曝線量は、60Coガンマ線を照射した校正試料のcalibrationカーブを用いて推定した。
11本中8本については頬側と舌側に分けてESR測定を行ったが、前歯のような頬側試料でESR推定線量が高くなる傾向は見られなかった。また1本の歯では頬側試料も舌側試料も共に信号が全く認められなかった。これは知歯と判明したので、恐らく被爆時にまだ出来上がっていなかったためと想定される。残りの10本中7本は、DS02推定線量の計算されていた7名に由来するので、DS02骨髄線量とESR推定線量との比較を行ったところ、よい相関が認められた(ほぼDS02推定線量の±0.5Gyの範囲内に入る)。4名の工場内被爆者と3名のその他(日本家屋内被曝を含む)の被爆者の間に特別な違いがあるようには思われなかった。また6名については染色体異常頻度が調べられていたので、転座頻度から推定した線量をDS02線量と比較したが、この場合もよい相関が認められた。
これまで広島と長崎にはいろいろな局面で(例えば染色体異常頻度)、市間差が見られてきたいきさつがある。この食い違いの一部は、長崎の工場内被爆者の中に線量が過大に見積もりされている人があるためかも知れない。しかし今回、長崎工場被爆者の歯についてESR測定を行い初めてDS02推定線量と比べてみたが、上記のような過大線量評価を示唆する結果は得られなかった。
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© 2008 日本放射線影響学会
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