日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: FP-4
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被ばく影響・疫学
ヒト末梢血単球由来樹状細胞の分化誘導における放射線の影響
*吉野 浩教高橋 賢次柏倉 幾郎
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キーワード: 樹状細胞, X線照射, 成熟刺激
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抄録
[目的]樹状細胞(DC)は,抗原提示細胞の一つで,免疫システムに不可欠な存在である.我々はこれまでに,骨髄系DCとなりうるヒト末梢血単球に着目し,放射線に曝露された単球からでも正常なDCへ誘導できるかどうかを検討してきた.その結果,X線曝露単球からでもDCへ誘導できるものの,照射群でマトリックスメタロプロテアーゼ-9(MMP-9)活性低下などの一部機能低下が起きることを明らかにした(J. Radiat. Res., 49, 2008).この時の成熟刺激にはTNF-αを用いたが,本研究では成熟刺激にリポ多糖(LPS)及びサイトカインミックス(rhTNF-α,IL-1β,IL-6,PGE2:MIX)を用い,放射線のDCへの分化誘導に与える影響が成熟刺激によって異なるかを検討した.[方法]ヒト献血バフィーコートから末梢血由来単球を分離し,X線0,2,5,10 Gy照射した.照射18-20時間後,各単球をrhGM-CSF,IL-4を添加した培地で5日間培養し,未熟DCへ誘導した.成熟刺激としてLPS又はMIXを用い,48時間刺激した.細胞表面発現抗原をフローサイトメトリー法で,培養上清中に含まれるMMP-9活性をザイモグラフィーで解析した.[結果・考察]X線照射単球由来未熟DCをLPSで刺激した場合,非照射群と比べて共刺激分子のCD80や成熟マーカーのCD83の発現量が低下する傾向が観察されたが,MIX刺激時には非照射群と照射群の間で大きな違いは観察されなかった.また,LPS刺激成熟DCの培養上清中のMMP-9活性は,非照射群と比べて照射群で低下する傾向が観察されたが,MIX刺激時には非照射群と照射群で大きな変化は観られなかった.以上より,放射線がDCへの分化誘導に与える影響は成熟刺激の種類によって異なり,特にLPSへの応答性を大きく低下させる可能性が示唆された.
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© 2008 日本放射線影響学会
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