日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: FP-9
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被ばく影響・疫学
培養ラット精巣における重粒子線によるアポト-シスの誘導とその修飾
*王 冰田中 薫尚 奕藤田 和子二宮 康晴Moreno Stephanie G.Coffigny Herve早田 勇村上 正弘笠井 清美根井 充
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抄録
宇宙に於ける人間の活動の増加と共に、高LET放射線の影響に関する研究が重要性を増しつつある。以前我々は、胎齢15日目の雄ラットに重粒子線で照射を行うと、胎児期の生殖腺や生後の精巣の発育、そして生殖力に対して、広範囲に渡って著しく有害な影響が起る事を報告した。胎児の生殖腺において放射線誘発生殖母細胞のアポト-シスのメカニズムを知る目的で、Wistarラット胎児の精巣を培養したものを重粒子線で照射し、細胞や分子に起こる事象について種々の阻害剤或いはNOラジカルスカベンジャーの影響を調べた。その結果、in vitroにおいて、密集して起こるアポトーシスの分布の状態に加え、妊娠15日目に当たる時期の生殖母細胞のアポトーシスの割合とその時間的経過が、生体において、胎内照射を受けた時に起こる事と類似していた。照射によって線量依存的にp53の発現の増加が誘導され、p21とBcl-2の発現の減少が誘導された。照射前に汎カスパーゼ阻害剤を投与すると、効果的にアポトーシスの発生が抑制され、密集型のアポトーシスの分布を減少させた。一方、p53阻害剤、ギャップ結合阻害剤、 NOラジカルカベンジャーの存在下では、その様な効果は認められなかった。これらの事は、in vitroにおいて、培養ラット精巣に照射する事によって起こった事が、生体において、胎内で精巣が照射された時に生殖母細胞に誘導されるアポトーシスに、病理学的に類似している事を示している。このアポトーシスはp53、ギャップ結合、NOラジカル非依存的であった。p53の発現はアポトーシスの誘導よりも寧ろ放射線損傷への応答と関係があるのかもしれない。生殖母細胞のsyncytial organizationは、ギャップ結合阻害剤とNOラジカルカベンジャーが防げなかった密集型のアポト-シスの形成に、重要な役割を演じていた。
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© 2008 日本放射線影響学会
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