日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: AO-1-3
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DNA損傷・修復
線虫C. elegansにおけるNTH遺伝子の同定と解析
*森永 浩伸米倉 慎一郎杉山 弘米井 脩治秋山 秋梅
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キーワード: NTH, 線虫, DNA修復
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抄録
DNA上に生じる塩基の損傷は、個体に対して細胞死、がん化、老化と言ったさまざまな悪影響を及ぼす。これらの影響を防ぐため、生物はいくつかの修復経路を備えており、酸化損傷塩基の除去・修復に関わる塩基除去修復(base excision repair : BER) もその一つである。BERの最初のステップを担うのはDNAグリコシラーゼと呼ばれる酵素であり、損傷塩基の認識と除去を行っている。これまでに多くのDNAグリコシラーゼが大腸菌やヒトを含むさまざまな生物で同定されてきたが、線虫C.elegansのDNAグリコシラーゼについての研究はほとんど行われていない。線虫C.elegansは寿命を測定する上での簡便さという点において、修復システムとその役割についての研究に極めて適しているのではないかと我々は考えている。
本研究では、ヒト等で損傷ピリミジンの修復を行うことが示されたDNAグリコシラーゼの1種であるendonuclease III (NTH)の線虫におけるホモログ、CeNTH (C.elegans NTH)に注目し、その酵素活性と欠損株の表現型を調べた。データベースに登録されている長さ780 bpのCeNTHを大腸菌で発現させてもチミングリコール(代表的なチミンの損傷)に対するDNAグリコシラーゼ活性が見られなかったが、上流の117 bpを加えた CeNTH (897 bp)には活性が見られ、内在性のCeNTHにも活性が見られた。このCeNTHはチミングリコールだけではなく、5-ホルミルウラシルや5-ヒドロキシメチルウラシルも認識・除去することができた。さらに、線虫のNth1欠損株の過酸化水素耐性、放射線感受性、寿命を野生株と比較したので報告する。
修復のメカニズムと役割を解明するため、我々は今後も線虫をモデル生物として研究を行っていきたいと考えている。
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© 2008 日本放射線影響学会
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