抄録
セッケル症候群は、重度の小頭症・発育遅滞・鳥様顔貌を特徴とした常染色体劣性の遺伝病である。これまでに、DNA損傷修復蛋白質であるATR遺伝子、もしくは中心体構成蛋白質のPCNT遺伝子が原因遺伝子として報告されている。しかし、多くのセッケル症候群患者についてはいまだに原因遺伝子が明らかにされていない。
今回、我々は日本人セッケル症候群患者について原因遺伝子の解析を行い、その結果2症例についてMRE11遺伝子に変異を同定した。1例目は2種類のスプライス変異を、2例目はスプライス変異とミスセンス変異を検出した。患者由来の細胞は、Mre11、Nbs1、Rad50蛋白質の発現が低下しており、染色体構造の不安定性と放射線高感受性を示した。
正常細胞においてMre11蛋白質の細胞内局在を解析したところ、中心体蛋白質であるgamma-tubulinと共局在していた。さらにおもしろいことに、患者細胞は中心体の複製異常を示していた。
現在、我々は中心体におけるMre11蛋白質の機能解析を進めているところである。