抄録
昨年度の学会では、in vitroで照射後1ヶ月以上培養を続けたヒト2倍体正常細胞において、修復できないDSBに起因すると思われる大きなH2AX/53BP1/ATM foci (IRIFs) が観察されることを報告した。このfociの形成には細胞の増殖活性は関与せず、serum starvationによりG0期とした場合でも、血清入り培地により対数増殖期とした細胞に照射した場合と同様な効率でfociが出現することを明らかとした。従ってアポトーシス抵抗性で長寿命の細胞において、NHEJやS期を介して行われるHRにて修復することができずに残った傷は細胞核内でかなり安定して保持されると考えられた。直せないdsb-fociの出現頻度と細胞の増殖能を指標とした生存率(clonogenic survival)の間には良い相関が見られたことから、これらの傷は細胞死の直接原因になっている可能性がある。修復不可能なdsb由来のfociとしていつまでも細胞に留まり続ける場合は、foci構成因子が通常の直せる傷によるfociとは異なるのではないかと考え、構成蛋白質の解析を行っている。