日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P1-17
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DNA切断と修復
ビタミンCはX線誘発DNA二重鎖切断生成を抑制しない
*岡田 卓也菓子野 元郎田野 恵三渡邉 正己
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抄録
【背景・目的】
これまでに、我々は、ビタミンCの放射線防護効果に関する研究をおこなってきた。その結果、ビタミンC処理は、放射線による細胞死や染色体異常誘導を抑制しないが突然変異や発がんの発生を効果的に抑制することを明らかにした (Koyama et al. Mutat Res 1998)。しかし、防護効果にこのような差が生ずる理由は明確ではない。そこで、今回、我々は、放射線によって誘導される代表的な損傷のDNA二重鎖切断生成に関してビタミンCが防護効果を示すか否かを調べた。
【方法】
本実験には、ヒト正常胎児線維芽様(HE17)細胞を用いた。コンフルエント状態にある細胞にビタミンC(5 mM)またはDMSO(2%) を2時間処理し、X線照射を行った。DNA二重鎖切断部位は、この部位に集積することが知られている53BP1の蛍光免疫染色で可視化した。照射1.8GyのX線を照射し、照射15分、2時間、24時間経過後に形成される核内の53BP1フォーカス数を数え、ビタミンC及びDMSOの処理によりフォーカス数が減少するか否かを検討した。各群200細胞あたりのフォーカス数を数え、その平均値により評価を行った。また同処理による生存率への影響を確認するため、コロニー形成法による生存率試験により、ビタミンCとDMSOの放射線防護効果を調べた。
【結果】
未照射群では、いずれの所定時間経過後においてもビタミンC及びDMSO処理による53BP1フォーカス形成への影響はなかった。照射群では、15分後で未処理:37.8個、ビタミンC処理:35.2個、DMSO処理:27.0個の53BP1フォーカスが観測され、照射2時間後では未処理:26.6個、ビタミンC処理:24.8個、DMSO処理:17.0個のフォーカス数を認めた。さらに、照射24時間後では、未処理:4.0個、ビタミンC処理:3.6個、DMSO処理:2.2個のフォーカス数であった。これらの結果は、DMSO処理ではX線照射による53BP1フォーカス形成が抑制されているのに対し、ビタミンC処理ではほとんど抑制されていないことを表している。このことは、DMSOはDNA二重鎖切断生成を抑制するのに対し、ビタミンCは抑制しないことを示唆している。コロニー形成法においても、DMSO処理による致死影響の軽減が見られたのに対し、ビタミンC処理では見られなかった。以上の結果は、ビタミンCがDNA二重鎖切断生成にほとんど影響せず、致死的損傷を軽減しないことを示唆している。
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© 2009 日本放射線影響学会
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