主催: 日本放射線影響学会, 第52回大会長 大久保利晃 (財団法人 放射線影響研究所)
真核生物のゲノムDNAが二重鎖切断 (DSB) を受けたとき、切断部周囲のヒストン2A のサブタイプH2AXはATM、NBS1、DNA PKcs などのプロテインキナーゼによってリン酸化を受ける。したがって、γ-H2AX は核内に生じたDSB の位置と量の指標とすることができる。
イオンビームの特徴は、エネルギー付与の局所性であり、特に重いイオンに関しては、トラックの周囲に局所的に大きなエネルギーを付与すると考えられている。そのようなビームが核に照射された場合、個々の粒子のトラックに沿ったDSBが生じると予想される。実際、我々を含む幾つかのグループが、重イオンビームを細胞に照射した場合、トラック構造を反映するようなγ-H2AXフォーカスが形成されるという報告を行っている。
しかしながら、ビームが組織中を通過しエネルギーを失っていくにしたがって、形成されるγ-H2AX フォーカスの形態にいかなる変化を生じるかについては詳しい報告がない。そこで、本報告では培養細胞にプロトン、カーボン、アルゴンなどのビームを照射し、ビームが培養液や細胞中を通過しエネルギーを失うにしたがって、γ-H2AX フォーカスの形態に生じる変化について報告する。